「FunRetrospectives: activities and ideas for making agile retrospectives more engaging」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-16です。 adventar.org

day-16は「FunRetrospectives: activities and ideas for making agile retrospectives more engaging」です。

5日間続けてきた「レトロスペクティブ祭り」の最終回です。

どんな本

FunRetrospectivesというサイトがあります。

www.funretrospectives.com

その書籍版、というものです(ざっくりした表現)。

本書は大半を割いて「レトロスペクティブに関する(構成するための)アクティビティ」のカタログを成しており、その数は90個以上に及びます。
その中には、レクリエーションよりのアイスブレイクのためのものだったり、同様の形式で少し観点を変えるようなバリエーションであったりも含まれるので、人によっては「使えるものはもっと少ない」と感じたりするかも知れません。

平易でコンパクトな英文で、1アクティビティにつき1枚の解説イラストを用意するような形式になっており、パラパラとめくりながら面白そうなものを探してみる〜というのが良い付き合い方かも知れません。

webサイトと同じく、アクティビティを7つのカテゴリに分類して紹介しています。

  1. Energizer
  2. Check-in
  3. Main course: Team Building
  4. Main course: Retrospective
  5. Main course: Futurespective
  6. Filtering
  7. Check-out

これらを、「レトロスペクティブミーティングの型」のようなパターン(本書では”The 7 step agenda”にそって組み合わせたり、チームの状況(チームやプロジェクトの時系列上の位置・ステージ、レトロスペクティブによって何を得たいか?というコンテキスト)に合わせてピックアップして使いましょう!というものです。

お気に入りポイントかいつまみ

自分は、今回のAdvent Calendarに際してザザっと通読してみたのですが、その結果として「雑多なレトロスペクティブアクティビティが脳みそになだれ込んできた!!」という体験となりました。
それによって、レトロスペクティブの「自由さ」みたいなものを感じられたし、単に「引き出しが増えた」という以上に「やりたい事を考える上での種を手に入れた」という気がしています。

もともと、本やネットで探したり出会ったレトロスペクティブの方法を、アレンジしたり使いやすいように言い換えたりするのは好んで行っていました。あるいは、「こうやって参加者を導くことができそうかもな?」とオリジナルのコンテンツを練ったり。
この本を全体を通して読んでみることで、それがもっと解放されたような感覚があります。

ざっくばらんな(しかも一定のクオリティを担保されている)インプットを多量に・集中的に得ることで、それらを包み込むパターンだったりエッセンスとなりうる部分が透けて見えやすくなったりします。
「こういう造りを持つことで、参加者からこの反応を引き出そうとしているのだな」とか「こういう部分に目を向けさせようとしているのだな」とか。
自分にとっては、そうした「守破離」の「破」に至るような題材としての効果があった感じが嬉しかったな〜と思いました。

とりわけ「1個ずつ、自分にあったものをカタログから探し出して使う」というユースケースであればwebサイトの方が理に適っているのかも知れません。
だらだら〜っとめくって目を通してみたいな、という時には書籍もおすすめです。

まとめ

いくつも「コレやってみたいな、面白そうだな〜」と感じるアクティビティもあったりで楽しく読めました!
個々のアクティビティを探ってみたいな、という時にはアジャイルレトロスペクティブズよりも手軽に読める感じがします。

今後も時折お世話になりそうな予感がする1冊でした!

「アジャイルCCPM: プロジェクトのマネジメントを少し変えて組織全体のパフォーマンスを大きくのばす」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-16です。 adventar.org

day-16は「アジャイルCCPM: プロジェクトのマネジメントを少し変えて組織全体のパフォーマンスを大きくのばす」です。

どんな本

この本を知ったきっかけは、↓の記事でした

blog.shibayu36.org

プロジェクトマネジメントって何・・するの・・・?って思いながら調べている内に出会した記事で、興味をもって買った次第です。

アジャイルCCPM」というプロジェクトマネジメントの中でもプランニングに関する手法を提唱する本で、クリティカルチェーンに着目しながら「どうやって納期に間に合わせるか」という話をしていきます。そこに「アジャイル」な取り組み方を組み合わせるというコンセプトですが、「ベロシティドリブンであること」「優先度の低いバックログを『バッファ』として扱えること」が大きな特徴だと感じました。

お気に入りポイントかいつまみ

CCPMについての概要が分かる

そもそもCCPMを知らないのだが・・という人は本来の対象読者ど真ん中ではないのかも知れませんが、概要レベル+αで言えばしっかりと説明されているため、(私自身も含め)どういったコンセプトなのか・どういう課題に対処できるものなのか、は抑えることが出来たように思います。
とりわけ、「スクラムガイドに従ってプロジェクトマネジメントするぞ、スクラム頑張るぞ」という入り口からプロジェクトマネジメントを学び始めた人にとっては、「全体の計画の立て方」よりも「個別のストーリーの見積もり方」「PO/ステークホルダーとの交渉が可能であること」の意識が強くなりがちなような気がします。そこに対して、「リリースまでないしプロジェクト全体の計画を立てる」とか「バッファをどのように設定するか」といった話は、総合的にプロジェクトを考える上で決して欠かせません。
そういった部分の補完になるような話だな、と感じました。

どう「アジャイルに」運用するか

「ベロシティを見ましょう(経験主義)」「フィードバック可能なものを漸進的に作りましょう(インクリメンタル)」「状況に応じてゴールや道のりをアップデートしていきましょう(計画に従うことよりも変化への対応/検査と適応)」・・・などの考え方、言葉があります。
とはいえ、「何もわかりません」「計画や約束はできないので」という主張のための材料となっては、アジャイルは単なるおためごかしになってしまいます。(開発の)チームとステークホルダー間で交渉をするためのインプットを用意する必要があるのです。

そうした面での、「どうやって見立てを持つか」「それを運用していくか(いつ・どのくらいアップデートするか)」についての手法が本書で語られていました。
アジャイル」とCCPMの掛け算であり、

  • ベロシティを元にして、いつまでにどのくらい終わるかを見据える
  • 理論をベースとしてバッファを設定する
  • 定量データで「終わらなそうな域に突入した(=バッファが枯渇した)」と判断したら調整を行う
    • 通常のバッファ回避策(残業やリソースの追加投入によるカバーetc)
    • スコープバッファの利用 = 低優先度のものをスコープから外す

と、ざっくりとまとめるとこんな感じになるはずです。

骨子だけを掻い摘むとあまりにも当たり前の事だけが語られているようですが、現場で適用可能な解像度を持ったルール化まで行われている点で、納得感もありつつ興味深い点でした。

まとめ

いわゆるプロジェクトマネジメントについて、まだまだ自分は理解が足りていないな〜と感じます。
それゆえに、こうして体系立てて說明を加えている本は新鮮で面白かったです。
そもそもの話として「PMBOKを読んでみよう」とか、もっとCCPMについて理解を深めていきたい*1なという課題も改めて得ることができました。

当然ながら、筆者が「自分の環境で、自分の考えたこのやり方が上手く行きました」ということで說明・提唱しているコンセプトであると思います。
說明が十分か?理論は万能か?については、(どんなものでもそうですが)答えは一定しないはずです。しっかりと組織や案件ごとのコンテキストに合わせて適用していく必要があるものだと考えます。
また、「アジャイル」と冠する割には探索についての言及が少ない(主旨ではない)ような印象も受けるので、そうした思考・哲学の素地は別途耕しておく必要性も感じます。「この本の真似をしたらアジャイルになれる」という感じではないです。

とはいえ、少なくとも自分にとっては、プロジェクトをやっていく上での武器が増えそうな予感も持てたので面白い1冊でした!

*1:この1冊で/この文量で「完全に理解した」と言える感じではないと思います

「LEADER's KPT」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-15です。 adventar.org

day-15は「LEADER's KPT」です。

どんな本

タイトルの通りKPTを扱った本で、その中でも「どうやってチームにポジティブな影響をもたらすか」「しっかりとカイゼンを根付かせるか、効果を上げるか」というリーダー目線のお話に重きをおいています。

私は未読ですが、同じ著者の別の本にこれだけ! KPT 【これだけ!シリーズ】があり、そちらを「基礎編」とするならコチラは「応用」に位置すると思います。
(とはいっても、「KPTってちゃんと説明できないかも・・」という人でも理解できそうな程度には、しっかりとフレームワークの說明も扱われています)

ふりかえりは「1回やって終わり」「ふりかえりミーティングで完結するもの」ではなく、寧ろ「ミーティングが終わった後に、具体的なアクションが行われるか。チームがどんな効果を得るか」の方が重要で、本書はその辺りもしっかりと強調されて書かれているなぁという印象です。
もっといえば、「ふりかえること」ではなく「チームがしっかりと進化し続けること、その文化を作ること」こそが本質的に目指すべき地平だとも感じるのですが、 正にこの本のテーマは「(KPTを用いて)自律的に動き成果を上げるチームを作る」なのです。

お気に入りポイントかいつまみ

改めて「KPT」の基本的な流れをおさらいできた

自分がKPTと初めて出会ったのは、過去に属していた会社で一緒に働いていた人が持ち込んできた時でした。
それが「原型」となっており、考えてみたらそんなにしっかりと「ルールの說明」をインプットしたことがないかも?という気もします。

もちろん、レトロスペクティブを扱った本ではshort stories/KPTに関して言及しているものは非常に多いので、その点でいえば流れは抑えています。その上で、やはり「もともとの体験していたこと」以上の知識のアップデートはあまりなかったかな?という気も。

改めて「KPTがメインの本」を読んでみると、色々な部分でなるほどなぁと思わされました。
とりわけ、ファシリテーションに関する指南がいくつか挙げられているのは注目すべき点かと思います。

「意見の整理、フィルタリングの方法」や「なかなか意見が出ない時はどうすればいいか?」など。
また、継続的・反復的に行われる事を前提とした、「前回のTryをどうするか」について触れている点も頼りになります。

うまくいっていないKPT

ふりかえりのファシリテーションをやっていると、「本当に効果があるのか?」という疑問や「もっと良い議論が出来るはずなのに」とモヤモヤする場面も少なくないと思います。

個人的に、この本の中で最も気に入ったのが「うまくいっていないKPT」についての解説が行われていた点です。
たとえば「トライありきのプロブレム」だったり、「言ったもの負けになっている(誰か1人がby-nameで取り組むことを前提としてしまっていて、チームのトライになっていない)」など。それらへの目の向け方が書かれているのはとても参考になります。

また、KPTで出たカードから「状態を測定する」という試みもなされています。
たとえば「キープとトライの割合」「全体に対して実施するトライの割合」「完了されたトライの割合、消化率」のような具体的なメトリクスを用意して、「良いKPT」だったり「どんな問題を抱えているのか」を示してみよう、というものです。

こうした観点も柔軟に取り入れながら、うまい感じにふりかりを回し続けていきたいものです。

まとめ

KPTの本でありつつ、それだけに留まらない「チーム作りを行うリーダーのための本」といった印象です。
平易な文章とコンパクトな分量でサクッと読みやすいのですが、時折パラパラと開き直しては復習にも使っています。

「とりあえチームでふりかえりはやっているんだけど。定期的に時間は取っているよ」という人に対して、更に踏み込んで「どういう効果を上げさせていくか」を考えるためのヒントとしてオススメ出来る1冊だと思います。

「アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-15です。 adventar.org

day-15は「アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~」です。

どんな本

アジャイルソフトウェア開発をやるにあたっての、計画や見積もりについて扱かった本です。
「そもそも完全な見通しを立てる、というのは現実的ではない」「不確実性に適応していこう」というようなスタンスで発明された「アジャイル」において、やはり「計画」「見積もり」は難しいポイントの1つです。
その辺りに悩んだり苦しめられた事がある人は必読・・・!といって良い本だと思います。

見積もりや計画づくりがアジャイルでないのに、プロジェクトがアジャイルであるということはありえない。

P23 イントロダクション

という一言が、本書のスタンスを言い表しているように感じます。
もしくは、

本書で扱うのはアジャイルな「計画づくり(planning)」だ。アジャイルな「計画(plan)」ではない。計画とはドキュメントや図表であり、ある時点のスナップショットを記録したものだ。そこに記録されているものは、不確かな未来にプロジェクトで起きるだろうと予測したひとつの姿に過ぎない。いっぽう、プランニング、すなわち計画づくりは「活動」である。アジャイルな計画づくりで重視するのは、計画よりも、計画を作る家庭そのものなのだ。

P33 1章 計画の目的

もハッとさせられたフレーズです。

本書は、

「なぜ(アジャイルな)計画づくりが重要なのか、どんな価値をもたらすのか」
「それはどうやって取り組めば良いのか、あるいは、計画づくりをより意味のある活動にするには何が重要なのか」
「作った計画をうまく活用する、プロジェクトの利益に結びつけるにはどうすればいいのか」

といった事を扱った本です。

よくある「なぜ理想日ではなくポイント、相対見積もりを用いるのか」といった話はもちろん、「優先順位付けはどのように行うのか」「1スプリント目においてベロシティはどうするのか」「バッファはどのように扱えば良いのか」などにも踏み込んで話しています。

お気に入りポイントかいつまみ

「なぜ計画するのか」に改めて立ち返って考える

計画や見積もり、面倒くさいんですよねぇ。。。それに正解もわからない!
とも思いますが、本書を読むと(特に第1部)、どんなプロジェクトであろうと・・あるいは「集中」を生み出すためにアジャイル開発にこそ計画って重要な経済活動なんだな、ということに気付かされます。

よい計画づくりとは、以下のような特徴を持ったプロセスのことだ。いずれも「ソフトウェア開発の問い」に対する答えを見つける手助けとなる

  • リスクを軽減する
  • 不確実性を減らす
  • 意思決定を支援する
  • 信頼を確立する
  • 情報を伝達する

P29

このあたりの「なぜ、そう言えるのか」について本書は全体を通して深めているような印象を抱きました。

理想日とストーリーポイント

スクラムに取り組み始めたときなど、なかなかイメージが得にくいことの1つが「ストーリーポイント」や「相対見積もり」ではないでしょうか。
時間ではなくタスクの規模を見積もること、という原則が本書で丁寧に解説されています。 (規模の見積もりの尺度として理想日を用いる、という方法も可能ですし、それは本書でも紹介されています)

本書は全体的に「少しスクラム(やアジャイル)の全体像・基礎が把握できてきた」というレベル感以上にある人が対象かと思いますが、この部分(4〜6章)については入門〜基礎レベルにある人にとっても価値のある話になるかも知れません。

優先順位付けとリスク

バックログ(のリスト)を作成した後に、優先度に応じて並び替える・・・というのは当然ながら必要なことですが、「どのように並べるのが良いか」というのはプロジェクトの成功の肝とも言える部分です。

その中でも、「リスクを下げるために」という観点は、なるほどなと思いました。
アジャイルは「不確実性」に立ち向かうものであり、検査と適応によってそれを成します。すなわち「未知のものを、いかに効率的に学習できるか」です。
そういった意味では、「未知性が高い」というリスクについては、早めに軽減することでプロジェクトをより確実なものにできます。

「リスク」と「価値」の軸で4象限を作り、「高リスク・高価値」に当たる部分を優先的に進めていこうというのがリスクに基づく優先順位付けです。

優先順位付けの例として、「コスト(後でやるより今やったほうが低コストになる)」「フィーチャーの開発によって得られる知識」「プロジェクトの成功を妨げるようなリスク」という順を提示しています。
知識というのは、「プロジェクトナレッジ」と「プロダクトナレッジ」があるとのことです。プロジェクトナレッジとは、技術検証等を含む「プロジェクト内部で必要とするもの」で、プロダクトナレッジとは「顧客に提供する価値の発見・創造につながるもの」とされます。検査と適応の態度について、とても重要な点です。

こうした複合的な軸で、全体を見渡して「最も合理的な進み方を考える」というのが計画づくりの価値と言えるのだな、と思いました。

ストーリーの分割

ユーザーストーリーのスライスについても、頭を悩ませる大きな問題の1つです。
そのあたりも本書ではまるまる1章を割いて扱っています。

  1. データ境界による分割
  2. 操作の境界での分割
  3. 横断的な関心事の分割
    1. 例えばロギングやエラーハンドリングなど
  4. パフォーマンス制約をストーリーにする
    1. 機能要件と非機能要件を別々のストーリーにする
  5. 優先度に沿って分割する

といった、具体的な観点を提示しています。

どうしても慣れが必要な部分だと感じるのですが、少なくとも「タスクごとに分割する」「コンポーネントやレイヤーで分割する」といった誘惑に抗うための自信が持てそうだな、と思いました。
「タスク」ではなく「フィーチャー」で捉える脳みそになりたいものです。

バッファ

バッファのもたせ方についても、具体的・数量的な方法が紹介されていました。
「なんとなく一律1.2掛けにしておく」といったおまじない的な方法ではなく、「(主観的な)自信・確率」に基づいて「バッファ = リスクをどの程度設けるか」という話が紹介されます。

まとめ

他にも、「予定に幅を持たせる」「ベロシティ駆動とコミットメント駆動」などは、自分がアジャイルっぽくプロジェクトを回している際に(摘み食い的に読みながら)非常に参考にした内容でした。

ともすれば「アジャイルなんだから、計画は雑にやってしまう」といった感覚になっているチームも数多いかと思います。
「不確実性を取り入れた計画づくり」と「どんぶり勘定」は別物であるということを、本書を通じて感じることが出来ました。

22章の「なぜアジャイルな計画づくりがうまくいくのか」もお気に入りの章であり、この本の全てであるとも言えるかも知れません。

「ドキュメントはいらない」「計画は立てない」という2大アジャイル勘違いの1つに対して、真摯に向き合った1冊でした。

「ふりかえり読本 実践編~型からはじめるふりかえりの守破離~」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-14です。 adventar.org

day-14は「ふりかえり読本 実践編~型からはじめるふりかえりの守破離~」です。

booth.pm

どんな本

ふりかえりガイドブックの森一樹さんの技術同人誌です。
2019年の技術書典7で販売開始とのことで、こちらの方が先で書かれたものになります。

「ふりかえりの型」という概念を導入して、状況に応じてどのようにふりかえりを設計するとよいか?というヒントを与えてくれます。

(目次より)

  • 2.1.1 短期間をふりかえる
  • 2.1.2 よいところを伸ばす
  • 2.1.3 問題を解消する
  • 2.1.4 学びを最大化する
  • 2.1.5 関係の質を高める
  • 2.1.6 多角的に捉える
  • 2.1.7 長期間をふりかえる
  • 2.1.8 未来を描く

「ふりかえりが何故必要なのか?」や「どうやったら、ふりかえりの目的を果たせるか?」という基礎的な部分は別の書籍等に譲りつつ、この本は問題解決のよりHow-to/実践に寄った内容が主題となっています。

お気に入りポイントかいつまみ

「型」がわかりやすい

ふりかえりの設計をしたりファシリテーションをする際に、「何を目的とするか」は最も工夫し甲斐のあるポイントの1つです。
それは、勿論チーム状況の観察に立脚したものになります。

しかしながら、ある程度のパターンがないと、「どういう状況で、なにを課題としてどうやって次のステージへ進めば良いのだろう?」というのは閃きにくいものです。
この本で掲げられている「型」は、正にそういったヒントとして即効性のあるフレームだな、と感じました。

他の本でも「イテレーションのふりかえり」「プロジェクトのふりかえり」だったり、「チームビルディングに」「感情に焦点を当てる?学びに焦点を当てる?」という切り口は提供してくれているものがあります。
本書は、それだけでなく「より問題の解決にフォーカスする」「よりパートナーシップにフォーカスする」といった、時期・成熟度を問わずに採用できるような型が紹介されているなぁと感じるところです。

「カタログ的に紹介したアクティビティから、選択して『コース』を組み立てる」ような流れではなく、「型→それと相性の良いアクティビティの紹介」という構成になるので、目的から逆引き的にいろいろなアクティビティに出会うような内容といえると思います。

もちろん、「型」にだけ囚われずにコンテキストに沿ったアジェンダを用意するほうが望ましいとは考えますが、そもそも「ずっと同じアクティビティを使っている」とか「ふりかえりって、どういう効果を求めれば良いんだろう・・?あまり具体的にイメージできてないな」といった人にとって、こうした考え方が提示されるのは「次に進むためのヒント」としてかなり大きいのではないでしょうか。

カラー写真嬉しい

各アクティビティの完成図的なイメージが、ホワイトボードの写真で掲載されています。
デフォルメされた図や概念図的なイラストではなく、「実際(っぽい)写真」が使われているのは嬉しい点です。

これによって、「実際にやるとどんな感じになるのかな〜」というのがより具体的にイメージしやすくなりました。

まとめ

說明も簡潔でありながら丁寧で、「どうやって使っていくのか」が想像しやすいのが嬉しい1冊でした。
こうした本を読むと、やっぱり「ふりかえりってとってもクリエイティブな活動だな〜」という感じがしてきます!

「正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-14です。 adventar.org

day-14は「正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について」です。

どんな本

スクラムを扱いながら「どうやって開発を進めていくか」という話をする本はたくさんありますが、それぞれ「どういう切り口で推すか」という所に個性も出てきます。
この本で言えば、「いかにフィードバックを獲得するか」「仮説をもって検査(検証)を進めていくか」というところにフォーカスを当てていたように感じます。
実際に、「仮説検証型アジャイル開発」というコンセプトが本書のメイントピックとなっています。
開発者やスクラムマスターを主たる対象とした本が多い中で、ロールとしてはプロダクトオーナー向けの1冊になるかと。

著者は、「カイゼン・ジャーニー」「チーム・ジャーニー」の市谷さんです。
副題に「アジャイルのその先について」とありますが、これはプロダクト開発につきまとう「不確実性」を乗り越え、あるいは味方につけたその先にある「チームによる共創」という姿について最終章で語られています。
ここでも「越境」というキーワードに触れられており、これは「目的(個人的には”ミッション”と読み替えてもいいと思います)で繋がったチーム」が辿り着けるものと書かれていました。

最後に。越境チームは、目的に忠誠を誓うチームのことだ。だが、目的が誤っていたとしても、目的に心中することなく、方向を自ら変えることができる。これが可能なのは、「自分たちは正しいものを正しく作っているか?」という問いを抱いているからだ。問いに向き合い続けられるならば、目的自体を捉え直すこともできる。
これからも高まっていくであろう不確実性に適応するためには、役割を中心とした調整によるプロダクトづくりから、問いと向き合い続ける共創によるプロダクトづくりが、より「ふつうのプロダクト開発」となっていくはずだ。そういうチームが次々と増えていくことを願っている。ともに前進しよう。

市谷 聡啓. 正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4916-4922). Kindle 版.

グッときたポイント

いかにプロダクトづくりの「仮説立て」を行うか

アジャイルがターゲットとしている「不確実性への対処」と「学習の向上」については、しっかりと仮説を持って実験を行うことが重要です。
本書では、「モデル化(仮説立て)」「検証」を繰り返すことをベースとしています。

そのための手法として、仮説キャンパス・ユーザー行動フローのモデル化と、どのタイミングでどんな手法を取り入れるか?が体系立てて説明されていました。
こうやって日々の活動の中でプロダクトを磨き込んでいくのか・・というのがイメージできました。

正しくないものを作らない

書籍タイトルが「正しいものを〜」ですが、実は「正しくないものを作らない」という事にこそ著者の気持ちが籠もっているのでは・・?と感じるくらい、個人的にはグッと来た表現でした。

ネガティブな結果、つまり「正しくないこと」の学びを積み重ねていき、そうした正しくないことを「除外」することで、結果的に正しさを残していく。これが、プロダクトづくりにおける仮説検証の戦略となる。すなわち、「正しくないものを作らない」だ(図4)。「プロダクトとして何が正しいのか」に対するチームの基準(共通理解)とは、正しいものを見つけようとして見定めるものではない。正しくないものの理解からこそ、その基準の輪郭を浮かび上がらせることができるということだ。

市谷 聡啓. 正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3445-3451). Kindle 版.

「ユーザーのために」と思って考えたつもりでも、いつのまにか「自分たちの頭の中にある都合のいいもの」になっていた!という事は多々あるかと思います。
そのくらい、「こういうのあったら良いよね」とか「これを作りたいな」という方向に物事を思考するのは自然なことです。
しかし、当然ながらそこに飲み込まれてしまうと望んだ結果は得られません。

なぜ「学び」「仮設を立て」「やるべきことを選ぶのか?」というと、自らが自然と持つ内発的な方向づけを律して、「失敗しないようにする」ためなのではないかと思います。
それが、「正しくないものを作らない」ということなのかと思いました。

わからないことを増やす

不確実性に対処するために、例えばクネビンフレームワーク等で想定されるような道筋は「分かることを増やす」のが王道だと思います。
しかし、本書では、それだけでは壁に突き当たることがあると言います。
そうした壁を突破する必要があります。

そこで、自身やチームが理解していることを時にはずらしたり捨てたりしながら、自分たちが知らないものを増やす事が重要とのことです。

わかっていることを並べてみて、そのうえでプロダクトの構想に行き詰まりを感じたら、それは今わかっていることだけではもっと先へ進んでよいのか判断できないということだ。そんな時はむしろ、「わからないことを増やす」活動を始めよう。守破離に則って表現するならば、「わからないことをわかるようにする」が「守」であり、「わからないことを増やす」は「破」にあたる。

市谷 聡啓. 正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4559-4562). Kindle 版.

そのための手段としては、視座・視野の操作をすることが挙げられています。

3回目の越境は、自分たちが見えている風景を変えること、つまり自分たちが捉えている現状への理解から離れて、新たな理解の獲得へと進むことだ。自ら不確実性を高めにいくような行為には強い意思が求められる。現状の理解に留まることは、コンフォートゾーン(安全領域)に身を置くのと近い。そこから出ていこうとすると、自分たちのこれまでの理解や経験が通じない可能性が高い。
この越境で求められる活動は、より高いアジリティでの実験と、そこから得られる学習への適応だ

市谷 聡啓. 正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4577-4582). Kindle 版.

ずっと同じところにいることが、ある種の「正しさ」への固執とも言えるのかも知れません。
そういったものを飛び出していくことで、自分たちの持っていた「正しくないもの」を客観視できるチャンスを獲得できるのかな?と考えています。

まとめ

概念っぽい話、説明っぽい話が多いものの、なるほどなるほど〜と思わされる部分も多くありました。
何よりも、プロダクト開発を「意味のあるものを作る行為」へと結びつけようとする、強いメッセージ性のようなものを感じました。

自分があまりPO的な立ち位置で働いたことがないため、少し読み飛ばし気味に進めてしまった部分もありますが、そういう場面が来たら改めて手にとってみたい感じがあります。

「アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-13です。 adventar.org

day-13は「アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット」です。

どんな本

先にアジャイルレトロスペクティブズも取り上げましたが、その「日本版」とでも言えるような本です。
「ふりかえりって、そもそも何だっけ?」から「良いふりかえりってどんなものだろう、そのためには何に気をつければ良いんだろう?」という話も抑え、多様なふりかえりプラクティス(アクティビティ)をカタログ的に紹介もしています。

副題に「アジャイルな」と書かれており、また本文中にも「スクラム」といった単語も出てきたりはしますが、これでもし「うちはアジャイル開発やってないし〜・・・」と距離を置かれてしまっていたら非常に勿体ないな!という気がします。

(確かに、アジャイルの文脈の中ではプラクティスとして固有名詞的に「レトロスペクティブ」が出てきたりもしますが・・そもそもチームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返りというのが「アジャイルになるために重要」な要素の1つな訳で、「アジャイルチームだからやらないと」というよりかは「それらをやっているってアジャイルだよね」といった話の流れではあります)

という訳で、かなり幅広いチームや現場に浸透して欲しい本であり、ふりかえりは「なんちゃら開発手法のプラクティス」というより「チーム(のプロセス)を良くするコミュニケーション」として、またこの本は「そんなコミュニケーションを質的に良くする指南書」といった捉え方をしております。

今の職場で、何かにつけて同僚や部下にオススメできそうな本を紹介する事が多いのですが、この本は最も多くの人にオススメした本でした。
更に言えば、自分が全く関わっていないところでも「買ってみました」「読んでみました」という人が現れており、かれこれ10冊くらいは直接的・間接的にコンバージョンしたんじゃないですかね・・・

お気に入りポイントかいつまみ

読みやすさ・とっつきやすさに振っている

SCRUM BOOTCAMP THE BOOKと同様のアプローチが取られており、「とある架空のチームを舞台にした、ストーリーに則った展開・進化」「(可愛らしいイラストの)漫画を挿入して課題とコンテキストの設定」「ポイントが視覚的に分かりやすい」「平易な表現、短い文章」といった特徴があります。
「あんまり普段は本を読まないんだけど」という人にも読んでもらえるようにしているな、と思います。

概念・理論的なところも抑えつつ、説教臭くない

理論として、あるいは説明的な説明を伝えるべき部分については「ちゃんと説明する」ようになっています。
例えば「受容が必要」「メタ認知が重要」といった、ともすれば堅苦しい内容もしっかり抑えているわけです。
しかしながら、「○○すべきだ」という押し付けるような形ではなく「○○出来ると良いよ!楽しいよ!」とやわらかく話しかけてくるような印象を受けます。

こうした部分も「人に勧めやすい」と評価できる要因になっていると感じます。

自分自身としても、体系として「ふりかえりをどう扱うか」が理解できましたし、また「抑えるべきポイント、重要な観点は?」についても抑えられて学びが促進されました。

シーンや目的ごとに取り出せるカタログ

一概に「ふりかえり」といっても、そのミーティングはいくつかのアクティビティを組み合わせたりしながら全体としての場の形成を進めていくことになります。
また、チームの状態やプロジェクトのフェーズに応じて「何をふりかえるべきか」は大きく変わってくるわけです。

そうした、「何をすればいいか」に大きな影響を与えるコンテキストを加味して「使えるアクティビティ」が紹介されているのです。
数自体もかなりバラエティに飛んでおり、本書の「第3部 手法編」だけで全体の4割ほどのボリュームがあります。
1つ1つの内容も、目的・進め方・ワンポイントアドバイスがあるだけでなく、イラスト付きで「どういう感じなんだろう?」がイメージしやすくなっています。

「状況に応じて設定するアクティビティの組み合わせ例」が紹介されているのも、個人的に更に良いなと感じた点でした。

例えば「チームに根強く残っている問題を解決したい」というシチュエーションでは「希望と懸念→信号機→5つのなぜ→ドット投票→SMARTな目標→信号機」といったような。
ミーティングの時間内のファシリテーションにとどまらず、「ふりかえりをデザインしていく」ことに対して主体的にイメージを持ちやすくなるな、と思います。

まとめ

とってもオススメで、多くの人に読んでもらいたいな〜と感じる本です。
もし「形式的にやってはいるものの、ふりかえりを回す立場としてクリエイティビティを持ち込もうって意識したことないかも」という人であれば、本書やアジャイルレトロスペクティブズは、1つ次元を上げてくれるヒントになるかも知れません。

「主体的に場をデザインし、ファシリテーションしていく」みたいなのはとても楽しいことだなぁと思います!