「アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-13です。 adventar.org

day-13は「アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット」です。

どんな本

先にアジャイルレトロスペクティブズも取り上げましたが、その「日本版」とでも言えるような本です。
「ふりかえりって、そもそも何だっけ?」から「良いふりかえりってどんなものだろう、そのためには何に気をつければ良いんだろう?」という話も抑え、多様なふりかえりプラクティス(アクティビティ)をカタログ的に紹介もしています。

副題に「アジャイルな」と書かれており、また本文中にも「スクラム」といった単語も出てきたりはしますが、これでもし「うちはアジャイル開発やってないし〜・・・」と距離を置かれてしまっていたら非常に勿体ないな!という気がします。

(確かに、アジャイルの文脈の中ではプラクティスとして固有名詞的に「レトロスペクティブ」が出てきたりもしますが・・そもそもチームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返りというのが「アジャイルになるために重要」な要素の1つな訳で、「アジャイルチームだからやらないと」というよりかは「それらをやっているってアジャイルだよね」といった話の流れではあります)

という訳で、かなり幅広いチームや現場に浸透して欲しい本であり、ふりかえりは「なんちゃら開発手法のプラクティス」というより「チーム(のプロセス)を良くするコミュニケーション」として、またこの本は「そんなコミュニケーションを質的に良くする指南書」といった捉え方をしております。

今の職場で、何かにつけて同僚や部下にオススメできそうな本を紹介する事が多いのですが、この本は最も多くの人にオススメした本でした。
更に言えば、自分が全く関わっていないところでも「買ってみました」「読んでみました」という人が現れており、かれこれ10冊くらいは直接的・間接的にコンバージョンしたんじゃないですかね・・・

お気に入りポイントかいつまみ

読みやすさ・とっつきやすさに振っている

SCRUM BOOTCAMP THE BOOKと同様のアプローチが取られており、「とある架空のチームを舞台にした、ストーリーに則った展開・進化」「(可愛らしいイラストの)漫画を挿入して課題とコンテキストの設定」「ポイントが視覚的に分かりやすい」「平易な表現、短い文章」といった特徴があります。
「あんまり普段は本を読まないんだけど」という人にも読んでもらえるようにしているな、と思います。

概念・理論的なところも抑えつつ、説教臭くない

理論として、あるいは説明的な説明を伝えるべき部分については「ちゃんと説明する」ようになっています。
例えば「受容が必要」「メタ認知が重要」といった、ともすれば堅苦しい内容もしっかり抑えているわけです。
しかしながら、「○○すべきだ」という押し付けるような形ではなく「○○出来ると良いよ!楽しいよ!」とやわらかく話しかけてくるような印象を受けます。

こうした部分も「人に勧めやすい」と評価できる要因になっていると感じます。

自分自身としても、体系として「ふりかえりをどう扱うか」が理解できましたし、また「抑えるべきポイント、重要な観点は?」についても抑えられて学びが促進されました。

シーンや目的ごとに取り出せるカタログ

一概に「ふりかえり」といっても、そのミーティングはいくつかのアクティビティを組み合わせたりしながら全体としての場の形成を進めていくことになります。
また、チームの状態やプロジェクトのフェーズに応じて「何をふりかえるべきか」は大きく変わってくるわけです。

そうした、「何をすればいいか」に大きな影響を与えるコンテキストを加味して「使えるアクティビティ」が紹介されているのです。
数自体もかなりバラエティに飛んでおり、本書の「第3部 手法編」だけで全体の4割ほどのボリュームがあります。
1つ1つの内容も、目的・進め方・ワンポイントアドバイスがあるだけでなく、イラスト付きで「どういう感じなんだろう?」がイメージしやすくなっています。

「状況に応じて設定するアクティビティの組み合わせ例」が紹介されているのも、個人的に更に良いなと感じた点でした。

例えば「チームに根強く残っている問題を解決したい」というシチュエーションでは「希望と懸念→信号機→5つのなぜ→ドット投票→SMARTな目標→信号機」といったような。
ミーティングの時間内のファシリテーションにとどまらず、「ふりかえりをデザインしていく」ことに対して主体的にイメージを持ちやすくなるな、と思います。

まとめ

とってもオススメで、多くの人に読んでもらいたいな〜と感じる本です。
もし「形式的にやってはいるものの、ふりかえりを回す立場としてクリエイティビティを持ち込もうって意識したことないかも」という人であれば、本書やアジャイルレトロスペクティブズは、1つ次元を上げてくれるヒントになるかも知れません。

「主体的に場をデザインし、ファシリテーションしていく」みたいなのはとても楽しいことだなぁと思います!