「アジャイルCCPM: プロジェクトのマネジメントを少し変えて組織全体のパフォーマンスを大きくのばす」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-16です。 adventar.org

day-16は「アジャイルCCPM: プロジェクトのマネジメントを少し変えて組織全体のパフォーマンスを大きくのばす」です。

どんな本

この本を知ったきっかけは、↓の記事でした

blog.shibayu36.org

プロジェクトマネジメントって何・・するの・・・?って思いながら調べている内に出会した記事で、興味をもって買った次第です。

アジャイルCCPM」というプロジェクトマネジメントの中でもプランニングに関する手法を提唱する本で、クリティカルチェーンに着目しながら「どうやって納期に間に合わせるか」という話をしていきます。そこに「アジャイル」な取り組み方を組み合わせるというコンセプトですが、「ベロシティドリブンであること」「優先度の低いバックログを『バッファ』として扱えること」が大きな特徴だと感じました。

お気に入りポイントかいつまみ

CCPMについての概要が分かる

そもそもCCPMを知らないのだが・・という人は本来の対象読者ど真ん中ではないのかも知れませんが、概要レベル+αで言えばしっかりと説明されているため、(私自身も含め)どういったコンセプトなのか・どういう課題に対処できるものなのか、は抑えることが出来たように思います。
とりわけ、「スクラムガイドに従ってプロジェクトマネジメントするぞ、スクラム頑張るぞ」という入り口からプロジェクトマネジメントを学び始めた人にとっては、「全体の計画の立て方」よりも「個別のストーリーの見積もり方」「PO/ステークホルダーとの交渉が可能であること」の意識が強くなりがちなような気がします。そこに対して、「リリースまでないしプロジェクト全体の計画を立てる」とか「バッファをどのように設定するか」といった話は、総合的にプロジェクトを考える上で決して欠かせません。
そういった部分の補完になるような話だな、と感じました。

どう「アジャイルに」運用するか

「ベロシティを見ましょう(経験主義)」「フィードバック可能なものを漸進的に作りましょう(インクリメンタル)」「状況に応じてゴールや道のりをアップデートしていきましょう(計画に従うことよりも変化への対応/検査と適応)」・・・などの考え方、言葉があります。
とはいえ、「何もわかりません」「計画や約束はできないので」という主張のための材料となっては、アジャイルは単なるおためごかしになってしまいます。(開発の)チームとステークホルダー間で交渉をするためのインプットを用意する必要があるのです。

そうした面での、「どうやって見立てを持つか」「それを運用していくか(いつ・どのくらいアップデートするか)」についての手法が本書で語られていました。
アジャイル」とCCPMの掛け算であり、

  • ベロシティを元にして、いつまでにどのくらい終わるかを見据える
  • 理論をベースとしてバッファを設定する
  • 定量データで「終わらなそうな域に突入した(=バッファが枯渇した)」と判断したら調整を行う
    • 通常のバッファ回避策(残業やリソースの追加投入によるカバーetc)
    • スコープバッファの利用 = 低優先度のものをスコープから外す

と、ざっくりとまとめるとこんな感じになるはずです。

骨子だけを掻い摘むとあまりにも当たり前の事だけが語られているようですが、現場で適用可能な解像度を持ったルール化まで行われている点で、納得感もありつつ興味深い点でした。

まとめ

いわゆるプロジェクトマネジメントについて、まだまだ自分は理解が足りていないな〜と感じます。
それゆえに、こうして体系立てて說明を加えている本は新鮮で面白かったです。
そもそもの話として「PMBOKを読んでみよう」とか、もっとCCPMについて理解を深めていきたい*1なという課題も改めて得ることができました。

当然ながら、筆者が「自分の環境で、自分の考えたこのやり方が上手く行きました」ということで說明・提唱しているコンセプトであると思います。
說明が十分か?理論は万能か?については、(どんなものでもそうですが)答えは一定しないはずです。しっかりと組織や案件ごとのコンテキストに合わせて適用していく必要があるものだと考えます。
また、「アジャイル」と冠する割には探索についての言及が少ない(主旨ではない)ような印象も受けるので、そうした思考・哲学の素地は別途耕しておく必要性も感じます。「この本の真似をしたらアジャイルになれる」という感じではないです。

とはいえ、少なくとも自分にとっては、プロジェクトをやっていく上での武器が増えそうな予感も持てたので面白い1冊でした!

*1:この1冊で/この文量で「完全に理解した」と言える感じではないと思います