「エッセンシャル スクラム」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-24です。 adventar.org

day-24は「エッセンシャル スクラム」です。

どんな本

スクラム全般について扱っている本の中では「決定版」といって差し支えないんじゃないでしょうか、といえる本。

入門的な位置づけて全体を扱った本(SCRUM BOOT CAMP THE BOOKなど)、 特定の領域にフォーカスを絞った本(アジャイルな見積りと計画づくりアジャイルレトロスペクティブズなど)、「困ったこと・ハマりどころ」だったり視座を上げた話題にフォーカスした本(みんなでアジャイルSCRUMMASTER THE BOOKスクラム現場ガイドなど)は色々とあり、またどれも読むべき本たちだと思います。

しかし、意外と「スクラム全体について、しっかりと踏み込んで扱った本」は珍しいと感じました。

基礎的なレベルから扱われおり、それでいて中級レベルに踏み込んだような人(例えば認定スクラムマスター研修を受講しました、くらいの)にとっても一読に値する本になっていると思います。
(スクラムについて知ろうとした人が1番最初に読む、というのには少し重いかも知れません。読めると重いけど「ページ数が少なくて全体感を掴める」という本は他にもあるはずなので、そっちを掴んでからのほうが良さそう)
また、1つ1つのトピックについて丁寧に扱われていることから、リファレンスにも使えそうです(まえがきの「本書の使い方」にも書いてあるとおりです)。

大凡、頭と経験で叩き込んだ後はスクラムガイドを読み直して大事な要素を思い出す・確認する事が多いかとも思いますが、他の人と認識を揃えたりインプットを提供するには、やはり「ルールブック」だけでは足りません。その点、「なにを・どんな形で説明すれば良いのか?」については本書が活躍してくれるかと思います。

お気に入りポイントかいつまみ

本質的で補足的なスクラムのガイドブック

スクラムは「軽量なフレームワーク」です。
そのために、(スクラムガイドを使って)実際に現場で取り入れようとするには、「スクラム外」の補助的なプラクティスが必要になってきます。
本書は、そのどちらもしっかり扱っています。

第3章までに「スクラムフレームワーク」や「アジャイルの原則」がしっかり目に描かれます。
(ここまでだけでも、「なぜアジャイルか」を理解する上で重要な論点が多数説明されているので良い感じです。たくさん線を引きました。)

そして4章〜23章までが、個別的なトピックを扱いながら「スクラムの○○」を扱っていきます。
スプリント、ロール、バックログなどの「スクラム内」の話から、ユーザーストーリーやマネージャー、プロダクト/リリース/ポートフォリオプランニングなどの「スクラム外」の話も含めてです。

そうした「スクラムをやろうとしたら現実的に立ち現れる壁」に先手を打ってフォローしてくれる様子が、この本を決定版たりうるところまで「信頼できる本」に高めていると感じるのです。

個人的には、第8章「技術的負債」についての考察や「いつ・どうやって対処すべきか」が論じられている点はグッと来ました。
「ヘロヘロScrum」に語られているように、なぜか「内部品質を置いておいてどうにかする」という症状が時折あらわれる・・と言われます。

bliki-ja.github.io

なぜ技術的負債が悪影響を与えるのか、それがどのような形で現れてくるのか。どのように、スクラムの中で管理していくか?について説明されています。

そうした「避けて通れない問題」「深く考えなければならない問題」を、1冊で総合的に取り扱ってくれているのが本書のお気に入りポイントの1つです。

どうやって歩んでいくか

「基礎的な内容を(も)扱った本」でありながら「守破離の守より先へ歩ませるための本」であるとも感じます。
そのために「スクラムは何であるか」「何が起きるか」を理解していることが不可欠です。
その役割を言って担おうとしている、という意気込みが感じられました。

とりわけ、最終章「未来へ」は強いメッセージが散りばめられています。

個人的にハイライトした一節です。

スクラムを採用するときには、事前に物事を完璧にしなければならないと心配してはならない。そんなことはできないのだ!さらに、事前に完璧にしようとすると、当てずっぽうをしなければならなくなる。その場合、スクラムを適用して何が起きたかを見ることでしか得られない重要な学びが得られなくなるのだ。経験上、たいていのチームの最初の2回程度のスプリントは、うまくいかない。それでよいのだ。私がスクラムチームに対して望むのは、次のスプリントでは、前のスプリントよりもよくなってほしいということだけだ。だから、始めるのを遅らせてはならない。今の時点で、スクラムをどう使うのかわかっていると思っていても、次のスプリントをやりきった後になって、どれだけのことがわかるかを想像してほしい。

Kenneth S. Rubin. エッセンシャル スクラム (Japanese Edition) (Kindle の位置No.9171-9177). Kindle 版.

スクラム自体が「学習し続けていくこと」を大前提としてフレームワークだと思っています。
裏を返せば、「やってみて(検査)得られる学びに重きを置く」ともいえるし、「やらないとわからない」「最初から完成しているものなどない」ともいえるはずです。

「次のスプリントをやりきった後になって、どれだけのことがわかるかを想像してほしい。」とは、正に希望であり非常に心を掻き立てられるメッセージだな、と感じました。

まとめ

非常に力強く、頼もしい本だと思います。
(ボリュームもそれなりにある・・!)

スクラムガイド自体は適宜アップデートされていっていますが、本質的な部分は変わっていないはずです。
その本質にしっかりとアプローチしているので、本書も多少の読み替えは求められど古びることは無さそうに思います。

スクラムを学び始めた人には必ず推したいなと確信できる1冊でした。