「パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-24です。 adventar.org

day-24は「パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則」です。

どんな本

非常に名著でした。
タイトルだけだと「その3つに何の関連性があるのか」というのも分からなそうで、とてもとっつきにくそうな印象を覚えるかも知れません。
自分は「周りの人(の一部)がみんな読んでいる/読むべき本として名を挙げているから」というフワフワした理由で購入しました。

具体的な技術やプラクティスの本ではなく、歴史を紐解いて「どのように今のソフトウェア開発に影響を与えるものが、今のような形になってきたのか」という物語のような読後感を得ました。

タイトル通り、「(GoFデザインパターンの源流となる)アレグザンダーのパターン・ランゲージ、それ以前の思想」「オブジェクト指向とソフトウェア開発におけるパターンの発見と普及」「パターンとWiki」といったトピックに触れていきます。
「一見、何の関連性があるのか分からない」もの同士が「実は密接に絡んで影響しあっている」というのがよく理解できました。

こうした背景を知ることで、それぞれのコンセプトやその他の派生物について知る際にも「どのように見て取り、接するか」も変わっていくかと思います。

お気に入りポイントかいつまみ

「パターン・ランゲージって何」を知るにはまずこの本からでいいのでは

実は、この本は1度は読もうと手に取るも、「自分にとってどんな事をもたらすのかがイメージできないな」と思って途中で止めてしまっていました。
それを改めたて読もうと思ったのは、「組織パターン」を読もうとして難しい、先に「パターンとはなにか」を押さえたいかもな・・・と考えてのことでした。

オリジナルのパタン・ランゲージが目指していること、その前にアレグザンダー自身がどのように「失敗」「探索」を積み重ねてきたか?を理解することで、より立体的に「パターン・ランゲージの価値」を感じられるようになりました。

これまでは「ただのベストプラクティス集」くらいに捉えていたものが、なぜ「ランゲージ」と呼ばれているのか?「コンテキスト/フォースがなぜ重視されているのか」については、本書を読んで把握できました。
そして「ソフトウェア開発に取り込まれた時に、どのような変容が生じているのか」についても認識できたし、また「パターンをとりまとめてランゲージを紡ぐことの威力」についても本書を通じて感じることが出来ます。

自分にとっては間違いなく「イキイキとした」は特別な意味を持つ言葉になったし、また「参加の原理」「漸進的成長の原理」といったアレグザンダーの提唱した考え方が、いかに「アジャイル的」であるか・・と非常に感銘を受けました。
(実際、本書をきっかけにオレゴン大学の実験 (SD選書)も読んでみて、とても面白く感じました)

自身の見識を広げる「教養」として

この本にあるような内容を知ったところで、明日からの仕事に役に立つ!という性質のものではないと思います。
しかし、個人的にはいち開発者として何かが「開けた」ような印象も持ちました。 少なくともデザインパターンを始めとした所々の「パターン」について、XPの生い立ちについて触れることができたことは、学び方・学ぶべき領域の選び方や感じ方について少なからずインパクトを与えました。
(実際、この本を読んで「パターンとは」を知ったことで、捉えにくいと感じていた「組織パターン」も読破できたように感じています)

「読める本が増える」というのは、1つの教養の効用なのではないかと個人的には思うところです。

まとめ

「この本は、いつ読むべきか?」と考えると凄く難しいと思いますが。
ただ、自分の周りの多くの人に読んでみて欲しい1冊なのは間違いないです。2021年に読んだ中でTOP5には入りそうです。

続きとしては、「時を超えた建設の道」「パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語 (リアリティ・プラス)」といった本に学びを広げてみたいなーと思っています。積んでいます。