「カンバン仕事術」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-8です。 adventar.org

day-8は「カンバン仕事術」です。

どんな本

ソフトウェア開発の文脈における「カンバンって何だ、どう凄いんだ?どう使っていけばいいの」という問いに答える本を1冊挙げろ、と言われたらこの本の名前を出すと思っています。
文体はカジュアルより(ゆるいイラストのキャラクターがでてきます!)だし平易でありながら、プラクティスの解説や背景理論の紹介も取り扱っている本です。

カンバンのコアである「スループットを計測せよ」「フロー効率を挙げろ、WIPを制限しろ」の実践方法を説明してくれます。
個人的には、This is Leanで「フロー効率」に関する理解を得て、この本で「カンバンとは?どう使うか?」を学んでみると、明日からでもやってみたいような気持ちになりそうだな!!と感じています。

基本的には、架空のチームが「うまくいくためにカンバンに取り組んでいく」という体裁になっており、1つ1つのプラクティス、それが必要となるコンテキスト、採用に際して心得るべきポイントを紹介していくような流れです。
そのため、「どんな事をすると良いか」の紹介が具体的になっています。
(読みながら「詳細すぎるな」と感じる部分は、パパっと読み飛ばしてしまっても問題ないはずです。そうした読み方をしても迷子になりにくそうだな〜と思うのは、ひとえにとっつきやすい文体と丁寧な説明が行われているからです)

お気に入りポイントかいつまみ

カンバンについてわかりやすい、やってみたくなる

個人的に、この本に注目したのは「スクラムをやるか・・?しかし、ちゃんとしたスクラムをやるには必要な条件が満たせなそうで曖昧なものになりそう。となると、プラクティスを削って"Scrum But"になってしまうのが関の山に感じる。アジャイルに動けるように志向したいが、うまく失うものを抑えて取り組めることはないか・・?」という流れでカンバンに興味を持ったからでした。

この本はその期待に十分に答えてくれます。

最初に「まず、こういう事をやってみましょう」というプラクティスやルールを説明したあとで、徐々にリーンの哲学についての言及も増やしていっているような流れに感じました。
そうした構成もあってか、「手軽にやってみてOK」というメッセージを発しているような印象を受けました。 「説教臭さ」みたいなのは少ないと思います。

「WIPの制限」について知ることが出来る

色々な原則や理論が(当然ながら)紹介されていますが、カンバンについてしっかりした知識がない状態で本書を手にとった自分にとっては「WIPの制限」というコンセプトがとても新鮮に感じられました。
その前提となる「バッチサイズを小さくする」という話も勿論扱われており、そうした上で「カンバンというプラクティスを最も効果的にしていくには("ならでは”の価値を生むには)、WIPの制限だな」という感想を持ったのです。

この辺りは、

  • 5章: 仕掛り作業
  • 6章: WIP制限
  • 7章: 流れの管理

で紙面を割いて丁寧に掘り下げられています。

ただの「タスク管理ツール」としてのカンバンを使ったことがある人であれば、3,4章はについては目新しい情報は少ないかも知れません。
自分にとっては、5章からが「カンバン」やこの本自体の本領発揮だなーという風に感じました。

カンバンをベースとした(生産性の)改善

11章に「改善のガイドとなるメトリクスの使用」という章があります。
継続的な改善ができるかどうかが、真の意味での「よい取り組み・プラクティス」といえるかどうか?の境目ではないでしょうか。
そうした意味で、「何をやっていくべきか」までしっかり抑えられているのは嬉しいです。

具体的には、以下のメトリクスについて解説されています

  • サイクルタイム
  • リードタイム
  • スループット
  • ボードにある課題やブロッカーの数
  • 納期遵守率
  • 価値要求と失敗要求

その上で、どう見える化するか?について2つの図を紹介しています

  • 統計的プロセスコントロールチャート(SPCチャート)
  • 累積フロー図(CFD)

何をするにしても一定期間が経つと「自分たちはうまく行っているのだろうか?」という心配がつきまといます。
その時に縋り付ける情報・テクニックがあるのはありがたいなーと思います。

まとめ

カンバン/Kanbanについて初めて学んだ本が、カンバン仕事術でした。
(恐らく非常に良い選択をしたと思っています。)

スムーズに行って気持ちのいい開発は楽しいもので、そのために状況やチーム課題にあった取り組み方を選べるように、引き出しを増やしておきたいものです。
そのためには「広く・本質的に知る」ことが欠かせません。

カンバンについては、この本がそのための案内人たる1冊になってくれるのではないでしょうか