この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-4です。 adventar.org
day-2は「アジャイルサムライ」です。 カレンダー1がスクラム、カレンダー2がXP/リーン/カンバンという(ゆるい)区分けをしているので、この本についてはどっちに入れるんだろう?XP寄りか・・?という気もしたのですが、「自分がスクラムを学び始めた時に、この本も読んだから」という主観的な理由でコチラに含めています🤗
どんな本
スクラムやアジャイル開発をやるに際して、「最初に何を読んでみると良いですか?」と聞かれたらSUCRUM BOOTCAMP THE BOOKか、本書「アジャイルサムライ」と答えるかと思います。
「スクラムを」って質問だったら、まずはBOOTCAMPでそれからアジャイルサムライを〜ってなりそう。
翻訳の角谷さんによれば
"2010年頃から「アジャイル開発に興味あるけど、どれか1冊読むならどれがいいか」みたいな質問される機会が増えてきたんですが、なかなか最初に読める手頃な本がなくて……。『アート・オブ・アジャイルデベロップメント』(オライリージャパン)は良い本なんだけど、ちょっと興味がある人の最初の1冊としては大部だなと。"
アジャイルアカデミー「アジャイルサムライの見積りと計画づくり」はどうやってうまれたのか? (1/3):CodeZine(コードジン)
とのことで、やはり「入門書として推せる」ような難易度・網羅性・そして本質的であり実践的であるよな書籍だと思います。
個人的には、読者の声にある次の書評が好きw
"最初は、軽いノリの入門書だろうと高をくくっていた。「マスター・センセイ」だし、そもそも「サムライ」だし。でも、そんなに甘くない。軽い文体とは裏腹に、アジャイルな開発のありかたが、きわめてロジカルかつ網羅的に語られている。ありそうで、なかった本。手元に置いておけば、きっといいことがあるはずだ。
Jonathan Rasmusson. アジャイルサムライ達人開発者への道 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.42-47). Kindle 版.
まさにその通りだなーと。Head Firstシリーズほどには軽妙さに倒してないですが、十分に「ノリが軽い・・というか独特なノリだな!!」って気はします。もしかしたら、それで読む人を選んでいるような面はあるのかも。
「アジャイルとは何か」「アジャイルなチームとはどういうものか」を示すと同時に、「アジャイルになっていくには、どこからやればいいか(そのための道具箱)」をしっかりと解説してくれている一冊だと思います。
内容の網羅性については、目次(部のタイトル)を見ると雰囲気がつかめるかと思います。
「価値・原則」から始まり、「アジャイルなチーム」を扱った後に「プロジェクト」の話をして「開発」です!
アジャイルの背骨たる価値・原則については勿論のこと、そこに続くトピックについても、その内のどれが欠けても「うまくいかない」もしくは「効果が著しく失われる」というようなものであり、一気通貫で読めるのは有難いことです。
決して「スクラム」の本ではありませんが、「スクラムかどうか」を気にするのであれば、この本の内容を踏まえながら、スクラムガイドに従った行動を組織したらそれはスクラムになるんじゃないかな?という気はします。
本書で扱われているプラクティス、もしくは本書が起因となり流通したプラクティスが、そのうちのいくつかは「アジャイルサムライを読んだことはないけど知っている」というレベルで広く知られていると感じます。それが、この本の影響力を物語っているのではないでしょうか。
(そのうちの1つは「インセプションデッキ」だと思います)
特にグッと来てるポイント
初めて出会った時に、というよりも現在の視点で振り返っても「すげーいいなぁ〜」と思っている箇所など
インセプションデッキ
これについてはあんまり説明不要かな?と思ってはおりますが。
「開発の話」を中心に考えていた自分にとって、例えばそれは(技術的なプラクティスだけには限定せずとも)要件定義や見積もり、優先順位付けやデリバリーの問題が頭を占めていました。
ですが、「チーム作りをする / チームになる」ためのツールが紹介されているわけです。
めちゃくちゃ詳細に紹介されているか・・?というと、例えば「ワークショップのための手順」みたいなレベルで説明されている訳ではありませんが、まさに「デッキ」であり「こういう情報を揃えましょうよ」というガイドとしては十分すぎるほど強力なわけです。
これは、チームビルディングを行う上で重要な学びになって自分の中で活きています。
荒ぶる四天王
"太古の昔より、あらゆるプロジェクトは4つの固く結びついたフォースによって統治されておる。それが荒ぶる四天王、すなわち時間、予算、品質そしてスコープだ。
どんなプロジェクトにも奴らが待ち受けており、いつも必ず破壊と混乱を引き起こすのだ。すなわち、
- スケジュールは圧縮される
- 予算は削減される
- バグのリストは長くなる
- やるべきことは際限なく沸き出てくる
荒ぶる四天王のパワーは圧倒的だ。しかし、彼らを手なずけることもできる。そのためには、プロジェクトにおいて四天王の一人一人と調和を保ちながらうまく付き合っていく方法を学ばねばならん。"
Jonathan Rasmusson. アジャイルサムライ達人開発者への道 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1770-1778). Kindle 版.
「時間・予算・品質・スコープ」のうち、もし「時間と予算が固定されているなら、変動させるべきはスコープである」という考え方は、プロジェクト運用のあらゆる要素の基礎になるものだと感じます。
「品質を犠牲に」しているのであれば「それ(プロジェクトやその成功)はまやかしでない」とさえ述べられています。
これはイテレーションやタイムボックスの考え方と組み合わせると尚効果的になるなーとも感じていて、例えば「まずはテスト無しで書いて、スプリントレビューに持っていく」ことに対して抱く違和感を言語化してくれました。
具体的なプラクティス群
入門書で難しいのは、「背景・全体体系」のようなものも十分に抑えつつ、「じゃあそれはどうやっていけばいいの?」を埋めるための具体的・各論的なプラクティスの紹介です。「概念」だけでなく「現場に連れて帰る」ためには、いい感じな方法が知りたいもの。
その点で、本書は色々なプラクティスが紹介されています。
先に言及したインセプションデッキもその内の1つですし、その他にも「ユーザーストーリー、INVESTなストーリー」「ベロシティ、ストーリーポイント、バーンダウンチャート」「総体見積もり、三角測量」「プランニングポーカー」といったプラクティスが紹介されています。
そういった肉付けによって、チームを「少しアジャイルっぽくしていけそう」という道筋が浮かんでくるように思えるのです。
まとめ
そういった訳で、アジャイルサムライでございました。
本書は「とにかく軽いノリで気軽に読み進められる」という点が特徴だと思います。(ただ分量はそこそこあるかも。入門的な位置づけの本での336ページって話なので)
イラストやテキスト含め「変な(ユーモアのある)表現」は散見されますが、小難しい単語は少ないはずです。
気軽に手にとって、楽しみながら読んでみるとよいのでないかなーと思います。