「ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-18です。 adventar.org

day-18は「ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方」です。

どんな本

最初に読んだ当時、このブログでも言及しています。

daisuki.nichiyoubi.land

「どのように、ミッションオリエンテッドで一枚岩な組織を作るか」「どう維持するか」という話が展開されています。
発売当初、「ユニコーン企業はスクラムをやっていない」というキャッチーなセリフが出回って(独り歩き?)いた印象も強く、また「エンタープライズ企業のアジャイルチームと(Spotifyモデルの)スクワッドは何が違うのか」という風に対比したりなど、「アジャイルの本ではないし、価値を共有しないものだ」とも思われるかも知れませんが。
しかし、実際には「顧客、インパクト、学習」を非常に重視しており、また「ミッションコマンドを実現する・パワー・トゥ・ザ・エッジを備えるために、アイデンティティの擁立と自律的な組織を育む」というデザインを説いており、重視している価値観や哲学はアジャイル系の話と非常に近しい・・・というか、アジャイルソフトウェア開発をやる人にとっても大きな意味のある一冊だな、という感想です。

(言いたいこととしては、「時限的なプロジェクトによる開発」への批判であり、決して「アジャイル」への否定はする必要はないんじゃないかな〜とは個人的に思ったりしました。)

そして、「文量も多くなく、文章も平易で、挿絵の雰囲気も楽しい」というのも、本書をオススメしやすい嬉しい本たらしめています。

また、余談ですが、こういう繋がりも知ってみると何だか面白いなぁと思うのです。

お気に入りポイントかいつまみ

どうやって「やるべきこと」をやりながら「やらなきゃいけないこと」を補うか

本書が翻訳された時点で「SpotifyはもうSpotifyモデルを使っていない」という話が出回っていました。
訳者あとがきでも、『「Spotifyモデル」はそれ以後も変化していったようです。」として言及されています。

では、一体何なのか?というと、まずは「ミッションを隅々まで浸透させて、自律的に動けるように組織する」ことが最上段の戦略として存在し。
そして、「自律的にミッションを達成できるように、価値に基づいた強い連帯」と「能力差やサイロ化による不活性を防ぐための支援の形態」があるぞということだと思いました。
前者が「やるべきこと」だとして、後者はある意味での必要悪、「やらなきゃいけないこと」なのかなと。
また、どこに流動性をもたせるか、どういう単位での括りを作るか?については、もはや「枝葉」に位置するものでしかないような気がするのです。それよりも、「骨格」となるのは、やはりミッションや信頼といった部分なのかな、と。

そういった意味で、個人的には本書中で特に重要なのは「3章まで」「5章」「9章」であって、それらの総まとめが「10章」なのかな?なんて感じています。

ちなみに、SpotifyモデルはCAL-1研修でも取り上げられていました。

まとめ

訳者あとがきが公開されており、これを読むだけでも雰囲気をかなり感じられるのではないかと思います。

scrapbox.io

また、かなり話題になった本(で読みやすい)でもあるので、ネット上に色々なレビューが投稿されています。楽しいですね。

これを読んで「もっとスタートアップみたいに振る舞う」には、何をどこから始めていけるのだろう・・・というのが我々読者にとっての大きな宿題であるように感じています。
(もちろん、「形だけ真似するな」と散々書かれているのに「組織構造を模倣しよう」なんて愚策は打ちませんよね)

良い組織を作る、このくらいの「柔軟で縛りが少なくて複雑」な感じのする組織形態に耐えうるような企業文化の根を張らせる、そのためにまずはマインドを育む、始めるのはごく一部のリーダーシップを持つ人から・・・・・と組み立てて考えていくと、「今からできること・やるべきこと」がゼロではないはず。