認定アジャイルリーダーシップ Iを受けた

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-11です。 adventar.org

day-11は、書籍の紹介の代わりに、参加した研修の話です。 今年の10月に認定アジャイルリーダーシップ I(CAL1)を受けてみたので、それについて「ひとりでアジャイルスクラム以外編〜」カレンダーの1篇としてふりかえってみたいと思います。

www.jp.agilergo.com

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※ 自分が受講した開催回のリンクではありませんが、アギレルゴの研修だったよーという意味合いのリンク。

受けてどうだったの

非常に考えさせられる研修で、いくつも「大事にしたいな」と思えるエッセンスを受け取りました。 全く新しい概念、根底から価値観を覆される体験・・・というものこそ無かったものの、それでも「改めて考え直したい」「重く受け止めたい」という考え方が多数ありました。
なので、もっともっと勉強も実践も内省も続けていかなければならないし、また自身の視野だったり興味関心の分野も少し広がったかな、と思います。

「ここに答えがある」という期待よりも「しっかりと一歩を踏み出したい」という期待からの受講だったので、「学ぶためのヒントがある・源泉となる」事が非常に有難いです。期待に沿うものでした。

これで、自分はCAL-E/CAL-Oのライセンスを取得したことになります。

どうして受けたの

「認定アジャイルリーダーシップ」なるものを知ったのは、 #scrumosaka の発表がきっかけでした。 このイベント自体が「せっかくCSMもとったし、スクラムとかアジャイルに興味を持ち始めたから、覗いてみよう〜〜」と思って参加したもの。
そこで、なんとなく見てみたセッションが「全く知らない世界だな」「面白そうかもなー」というものでして。

(録画が上がったら改めて観たいなー)

恐らく、「自分がチームを持ってスクラムをやる」以上に「組織全体を方向づける、よい方向に連れて行く」ことが現在の自分の仕事におけるミッションになりそうな気がしています。
急に広範囲へのチェンジ・エージェントに挑むような・・・・

そこで「リーダーシップとは」については興味分野となります。
とはいえ、CSM研修も受けたばっかだし、流石になぁ・・・・とか感じながら逡巡していたのですが、別の文脈で大きめな自己投資を決定したタイミングがあったので「こっち行くなら当然CAL-1も行くよな!?」となり。エイヤっと申し込んで振り込んだ次第です。

社内でマネージャーへの転身を打診された直後でもあり、「自分はマネジメントやリーダーシップというものを(アジャイルの文脈以外でも)武器として磨いていく必要がある」と感じたのも、エイヤっを後押しした要因にあります。

いずれにせよ、CSM研修とその後に別に受けたコースの体験から、くした研修は「たったの数日間や数十時間でも、自分だけで辿り着けるより遥かに濃く・高い地点に辿り着けるものなんだな」という事を理解していました。
なので、「恐らく学んだ方が良いであろう分野・方向性」について「費用さえどうにかしたら、しっかりと受けられるチャンスがある」となれば、学びたい気持ちに素直に従ってしまおう・・と。

ここで、「どうやって周囲を高いレベルにつれていけるか」「自分自身を影響を与えられる人材に引き上げられるか」のヒントや取っ掛かりをつかめればいいな、と期待してのものです。

当日に得たもの

中心的なテーマは「変革型リーダーシップ」でした。
ハイパフォーマンスな組織を築くためのリーダーシップ、となります。

講師のサホタ氏の会社で「アジャイル変革するための鍵」の資料を配布しているので、ここで概要はつかめるかも知れません。

shift314.com

文化が大事

研修タイトルは「アジャイルリーダーシップ」とありますが、実際には「文化とリーダーシップ」の研修であったといえます。
文化とは何か?どういう力を持つのか?be agileのための「よい文化」とは?

そういった点を論じていきます。

文化こそが進化と成長のキーである、と。
文化とは「何を感じて、何を話しているか」を決定するものなので、もし話している言葉が違えば「バベルの塔のように、目標に到達できずに崩壊してしまう」と。
ハイパフォーマンスな組織を実現するのは、それに見合った組織文化。

氷山モデルで「水面下にある大きなものは文化であり、目に見えない。目に見える戦略や先述というものは、氷山の一角に過ぎない」といった、印象的な表現も用いられていました。
アジャイルマニフェストで「プロセスよりも人を」とあるが、プロセスというのは正に「戦術」のことであって、人そのものがなすのが「文化」。
あのマニフェストに共感し、アジャイルを実践していくのであれば、文化に目を向けることからは逃れられないはず・・という理屈になります。

ハイパフォーマンスな文化を持つと生まれてくるのが、自己完結型・自律的な組織です。
なぜ「自律」が許されるか?といえば、全員が「同じように判断できる」し、それをお互いが信頼できているから。
「何を喋り、どう考えるか」が揃っているから、組織はその状態に行けるチャンスを手にします。

「生産プロセスの一部の歯車」のように扱う指揮統制型の組織でもないし、「支援してあげる・支援される」という関係性で成り立つ家族のような組織でもないし、自律的な組織は「皆が平等に考え、お互いに敬意を払って接する」という大人同士である必要があります*1

良い文化があると何がもたらされるか?継続的な進化、臨機応変でしなやかな意思決定と実践が、その答えの1つです。

失敗例として、「文化がないところに形だけ取り入れる」というパターンがあります。
(例: 「アジャイルをやる」のと「アジャイルになる」の差。価値観の共有をなくしてアジャイルラクティスだけを取り入れても、形骸化し空中分解する。寧ろ「押しつけ」によるストレスが、従業員のモチベーションを下げてパフォーマンスの低下をもたらす)

総じて、「組織の進化」は「文化の進化」であり、もっといえば「そこにいる人達を進化させる」ことがアジャイルリーダーシップに求められる事になります。

徹底的な傾聴

”レーザーリスニング” という概念で紹介されていました。
この研修において、リーダーシップは「ティーチング」「指揮統制」よりも「相手を大人として扱う」ことを重視しています。
そのために必要なことは、相手の存在を肯定し受容することです。

そのためのプラクティスとして「レーザーリスニング」です。

「相手の方へ、レーザービームのように視線を向けて、その中に置きていること・感じていることを聴き取る」というもの。
自身の価値判断や「教育」「フィードバック」は後回しで、とにかく全神経を「聴き取ること」に集中させます。

相手が「聴いてくれている」「私を見てくれている」と感じることで、(心理的)安全性がもたらされるし、「自分で考えること」への許可をもらっているように考え始めます。

更に、他人だけでなく自分に対しても「何が起き、どう感じているか」を聴いていく事も重要であると。
自分自身への観察をなくしては、「リーダーとしてどういう影響を与えているか」「どんな振る舞いをしている(見られている)か」に気づくことが出来ません。
自分を「正しく」保つことは大事です。 「自分自身を聴く」ことが必要になります。

これについては、瞑想のようなアクティブティを通じてマインドフルネスの獲得をすることで「聴けるようになる」という話でした。
瞑想とは、「自分の皮膚が何かを感じている、という事自体を感じる」ようなメタ認知のトレーニングでもあります。
「蒸し暑い・不愉快だ」「蒸し暑いという感情が湧いている」みたいな。

そして、「なぜ成功を手に入れられないのか?」について考える時に、自分の不足している部分 = 「リーダーシップの限界(を迎えている部分)」はどこか?を問い、認識していく必要があります。

まずは自分から / 忍耐を持って進める

文化とは「押し付けて形になるものではない」と説明されています。
「文化の芽が育つ土壌が整うのを待ち、その時が来たら種を巻きに行こう」という説明は、自分にとってはこの研修全体を通じても最も価値のあるものの1つであるように感じました。
「Calling」の考え方や、U理論で言う「プレゼンシング」に近い部分もあるのかな?と感じました。
機が熟した、準備ができた時に「一歩を踏み込む」ことができる、というのはとても感じます。

自分自身の体験として、職場において「レトロスペクティブ/ふりかえりをもっとやっていけると良いんじゃないかな〜」という気がして、実践的な知識の共有を働きかけた(勉強会の企画など)ことがありました。が、鳴かず飛ばずと言ってもいいくらいに反応が得られずに消滅しています。
そこから数ヵ月して、ふと気づくと色々なプロジェクトでも色々な形式でのふりかえりワークが行われるようになっていました。
これもまた、「土壌が整って、だから芽が出てきた」という一環なのかな?と思っています。

なので、リーダーは「芽が育ちそうな土壌があるか?を、歩き回りながらしっかりと観察して、良いタイミングに種を蒔く」必要があります。

では、どうやって土壌をつくるか・・?
まずは「自分からやってみる」というのが大事です。
「良いものだからやってみよう」なんて押し付けたり売り込んだりするのではなく、周りのニーズやインサイトに応える形で(例えば自分のチームなど、小さい範囲で)「こういうやり方をしてみよう」という取り組みをしてみる。
ある意味では、「他人にとっても良いものだと信じているから与える」のではなく「自分自身が良いと信じているから行う」に近いものですかね。
有名なムーブメントの起こし方に通ずるものを感じます。
人や文化も、自然と同じで、「自分のペースで成長していく」ものです。もし強引な接し方をすれば、それは折れて失われてしまいかねません。

それで、もし「価値のある」「しっくり来る」ものだったのであれば、じわじわとチーム外にも評判が届くようになる・・・と。

Culture Bubbleという考え方が紹介されていて、これがとても興味深く感じると同時に重要なものであると思いました。
これについては記事があるので、リンクを貼っておきます。

shift314.com

さて、これらを達成するリーダーに重要な素質・態度は何か?・・・それが「忍耐」だ、と。

研修を終えて

研修最終日のメモに、こんな事を書いています。

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色々な組織理論、心構えについて教わりました。
それらを総合して「では、自分がどうしていくか?どんな行動を選択するか?」について考えると、「謙虚に、忍耐強さをもって取り組む」という回答になります。
謙虚さとは、「自分をしっかり客観視すること」「周囲の状況や他者、そのコンテキストを尊重し尊敬すること」だという解釈です。
そして、忍耐強さは謙虚さから生まれるものだと思うのです。「俺のほうが正しい」となった時点で、教育したり支配したいという誘惑に負けます。それよりも、相手自身という個を受容し肯定することで、「きっと良い方向に向かうはずだ」と信じられるようになるのではないか、と。進行や到着がわかっているのなら、少しくらいは気長に待てるようになります。

CSM研修以上に、その場ですぐに「わかった・掴んだ、正解を見つけた!」とはなりにくく抽象的な内容だったように感じます。
それでも、多くの非常に重要な示唆をいただけたように思いました。その内のいくつかは、今時点での理解レベルで「とにかく実践してみるか」と思えるものです。

今後も、定期的にor折を見て、研修資料を読み返したりノートを開いてみたいなーと思いました。
CAL-2も受けてみたいな〜英語が分からないのは本当に機会損失だなぁ。。

*1:この辺り、特に「成功例」としての参考情報として「ティール組織」の書籍を紹介していました。それと同時に、ティール組織(書籍)については、「形式ばかりに着目しているから、説明としては不足・ミスリーディングだ」と指摘しています