「スクラム実践者が知るべき97のこと」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-17です。 adventar.org

day-17は「スクラム実践者が知るべき97のこと」です。

どんな本

「〜が知るべき97のこと」のスクラム版であり、つまりエッセイ集です。
オリジナルの97に加えて、日本のスクラムコミュニティなどで活躍する人たちのエッセイを10篇収録しています。

個人的に、こうしたエッセイ集には(タイトルとは裏腹に)「琴線に触れた所だけをしっかり大事にしていけたら良いのかな」というスタンスで対峙しています。
どれも素晴らしいのですが、いきなり「97項目」は多いじゃん?という気持ちがあり。
まずはざ〜っと読んでみて、その中でもタイトルや本文から感じ取るものや刺さる部分があったらじっくり読んだり読み返したりして、またふとした時に手にとって見て、それでまた気になるものを摘み上げて読んでみる・・・といった楽しみ方をしております。
そうすると、その読んだ時々に応じて気づくこと・感じることが大きく違ってくるのが面白いなと。

本書も、そうした楽しみ方をするのに十分足るような、示唆に富んで幅広く重厚な1冊でした。
一部でHowto的なものやプラクティカルな内容もありますが、全体的には価値観・原則を扱った内容が多いと感じます。
雰囲気としては、「スクラムを知るためのもの」というより「スクラムを深く味わうためのもの」というような。その道の実践者たちが「何を大事にしているか」を訴えてくる感じで、いろいろな視点からの「どうやってスクラムが活きるか」ひいては「スクラムを取り巻くチームが、いきいきとやっていくためには」について語るような本になっています。

お気に入りポイントかいつまみ

短く、バラエティに富んだ濃厚なエッセイ集

1つのエッセイが2頁と、とても短い構成になっています。
そのため、「ふと思った時に手にとって、目次を眺めてみて、その時の心が赴くままにパラパラとめくってみる」なんて付き合い方がしやすいのです。

そうした「利便性」は嬉しい所。

いくつか、今のタイミングでお気に入りのエッセイ

読む時々によって「どれが良かったか?」はとても変わりそうに思うので。
あくまで、この記事を書いている今の時点で〜という前置きをした上で、良いなと思ったものをいくつか挙げてみようと思います。

  • 13 「あなたのプロダクトは何?」という問いに答える
    • あまりにも当たり前すぎるような命題ですが、ふと忘れがちなものでもあると思います。様々な職種・ロールの人がコレボレーションするための依り代として、「プロダクトの定義」の原則を語ったもの
  • 26 あなたのチームはチームとして機能しているか?
    • スクラムを不全に陥れる4種類のパターンと、それに対応する3つの方法を記したもの。本書においては珍しく「価値観」や「心持ち」よりも「処方箋」よりの内容。こうした眼を持って、常にチームを観察していかないといけないなと思うのです。
  • 32 情報を発信するチームになる
    • これもまた「よくワークしているチーム」のための健康診断、といったような内容。「透明性」が発揮されている、とは?について語ったもの。
  • 54 いちばん大事なことは思っているのと違う
    • この短いエッセイのタイトルこそが、「アジャイルにやるべき理由」「スクラムに何故価値があるのか」を端的に言い当てているような気がする・・・内容としては、検査と透明性と適応について、改めてその価値を見直すもの
  • 56 「自分」ではなく「スクラムマスター」が大事なのだと気づくまで
    • ぐさっと刺さるようなタイトルで。でも、そうだな〜・・・と思う所。チームに奉仕するリーダーであれ、という境地に至るにはこうした「覚悟」もいるよなぁ
  • 75 スクラムではプロセスよりも行動が重要だ
    • スクラムを「プラクティスの集合であるフレームワーク」として(誤って)見た場合、単なる「プロセス」に堕ちる。その土台に、原則と価値があったはずで。このエッセイはスクラムの5つの価値基準から、どんな行動が創発するか?を語ったもの
  • 80 スクラムの6つめの価値基準
  • (日本版)09 インクリメントは減ることもある
    • 「フィーチャーを削除するPBIを追加すること」をオススメする話。じっくり考えてみたら、とても当たり前のような気もしてくるのだが、ハッとさせられるものがある

まとめ

癒やされたり、考えさせられたり、「そうそう!!」と共感して興奮したりするようなエッセイがたくさんあって楽しいな〜〜という本でした。
本当に、「目次だけ眺めてみて目があったタイトルの掲載ページを捲ってみる」っていう楽しみ方を続けていきたいなと思います。