エンジニアのためのマネジメントキャリアパスを読んだ

あまり丁寧な読書メモは作っていないのだけど。
前に、現職で人事的なアレがあった(打診された)タイミングでササッと掻い摘んで読んだ事はあったものの、確か全体は読んでおらず。最近、TLにてフォロイーの人が言及していたのを見かけたので、「そういえば」と思って手にとった次第。

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

全体的な感想

これは、その時その時にあわせて必要なところを何度も読む感じの付き合い方になる1冊かな〜という印象。もしくは、同じ記述を読んでも感じることや理解の仕方がどんどん変わりそうだ。
各章の「凄い上司、ひどい上司」の節は面白いな〜。定期的に、この節だけでも横串でパラパラと見てみるのも良いかも知れない。具体的な記述であり(=身につまされる思いになる・・・)、内容のリマインドとして効果的に使えそうに感じる。

各章の感想

1章 マネジメントの基本

P12 「できる上司」と思える人のもとで働いた経験はありますか。「ある」と答えた人にお尋ねします─その上司のどのような行動や業績をすばらしいと思いましたか。

「いい上司とは?」みたいな質問、もしくは「いい上司の要件。望むものは?」みたいなのを考えておくことが、マネジメントされる側が「いい上司を探す」のに際して必要そうだなぁと感じた。 この章の2節「管理のされ方」は良い話だな。

2章 メンタリング

確かに「メンター制度」を、「はじめてのマネジメント」の場として使うって方法はあるね〜って思った。よくある「新卒が入ってきたら2年目が指導する」とかもか。 これを、たとえば「組織全体を良くするためには」「自分自身が「他人」というリソースをどう活かして組織への貢献につなげるか」「システム全体を意識して、その最小単位である「個人」をどう配置し、駆動させるか」みたいな視座を持って臨む人はそうそういないはず。って意味で、「メンターにとってどういう意味があるか」はセットで渡してあげるのが良さそうね

あと「感情労働である、という勘違いを与えないように気をつける」ってのも。なるほど。

3章 テックリード

「テックリード」というタイトルではあるものの、「初めてのリーダー、管理職」みたいな感じで色々な話が詰まっていて面白い章だな。 「純粋なエンジニアとしてのキャリアを進むか、管理職としてのキャリアも考えるか」みたいなところも深く語られているし、「3.6 すごい上司、ひどい上司」の話も面白い。中盤くらいから、「上司や指導的な立場はどういう心持ちで、どういう仕事をするべきなのか」が描かれている。

4章 人の管理

上司にも部下にも「スタイル」があるよね、それをしっかりと理解して適切な選択をしよう!という話が、「例えば1on1でどういう会話をするか」といった具体的な例を挙げて説明されている感じ(4.3 1on1の進め方)。どれも「自分も相手も人間だから」みたいな経緯が土台にあるような雰囲気で、印象がよいなぁ

  • マイクロマネジメントの核心は「信頼」と「管理」
  • オートノミー: 自分の職務に対する裁量権がある程度与えられていて自主性を発揮できる状態

この辺りを見てみると、良い上司は「部下が動きやすくする・もっと活躍できるようにする」ような存在で、ともすれば「ある島は任せて、それ以外は自分で持つし場合によっては情報を遮断する」という感じになると思うんだけど、それは「隔離」「放任」と紙一重なのかもな。全体地図を示して、自分たちの現在位置を一緒に確認し、その上で「この船はどこへ向かっているのか」「自分のやるべき仕事はなにか」を汲み取ったり考えられるようにする・・ってスタンスのほうが良さそう。自分の過去の経験でも、「任せてはくれている(気がする)」「でも何かやりづらい」って感じることがあった。その理由はこの辺りかも。

5章 チームの管理

よりの現場から離れた = 「意思決定者」的な側面が強まっていく中で、どうやって「信頼を積み上げるか」「厄介な問題に対処するか」みたいな話。”管理者は「優しさ」よりも「親切」を旨とすべし(5.5 すごい上司、ひどい上司)”って言葉が結構刺さった!ここでいう「親切」には、誠実さや献身ってニュアンスが含まれているかな?あと”我が身を振り返る”のところもすごく重要。「やりにくい、面倒くさい」って問題をまずはっきり認知して = 「無意識に避けていないか?気が重くなっていないか?」みたいなところを発見して、そこに対してメスを入れて「自分で変えられそうなところはないか」って検討する手法だよなー

6章 複数チームの管理

ここまでに強調されてきた「自分でコードを書くべき、書かなければならない」がいよいよ間に合わなくなってくる・・というレベルのポジション、とのこと。
いかに本質的な仕事に時間を費やすか、あるいは現場にも大事なところにコミットしてもらえるように進めるか?みたいな話が載っていて(6.2 意思決定と委任)、その中で紹介されている「頻繁/頻繁でない」「単純/複雑」というマトリックスで自分がやるか任せるかを決めよう〜というのは面白い。「頻繁でなくて単純」が「自分でやる」べき唯一のものなのかw 考え方としては「それが立ち回らなくなった時に、どのくらいのリスクが有るか」。やらないとすぐにでも火がつく・・・といった問題に自分が積極的に介入することで「忙しくてできなかったリスク」が飛躍的に高まることになるよね、的な。一方で、「複雑」な問題にも、複数の観点で基本的には「委任」を目指したいと。頻繁でないもの(=緊急性が低い、って読み替えても良い気がする)に関しては「訓練目的」で、頻繁なものに関しては「チームを自律的にする目的」で委任を検討する、と。SPOFをなくす〜って感じだな。

「ノー」というのではなく「はい、それでですね」にする、っていう部分で笑った。いや変なことを言っている訳ではないけど。”こうやって「はい」と肯定形で受けつつも「限界」という形で実情を明示する(6.3 やりにくい仕事─「ノー」にも言い方がある)” ちょっとコレはやってみようかな〜って思った。喧嘩したり否定したいわけではなくて、建設的な議論や交渉がしたいのだものな。”「優先度を見据えた現実的な交渉」に持ち込めることが多くなるはずです。”、はい。

あと、この章の「良い上司、悪い上司」では「イングループ」って概念がでてきて、それがフラジャイルだし全体調和もとれないのでアンチパターンだよ〜っていうのはわかる。もっと着目したいなって思ったのは、「良いチームは部長クラスの同僚同士がチームになるべき」って話。「自分の管理するチームのニーズに振り回されないで、会社全体のニーズに即した意思決定を行えるようになる」なるほど!

7章 複数の管理者の管理

「複数のチームの管理」との違いは「責任の重さ」。これまでは「全員を知る」で対応していた部分が、もはや「開発者全員と話をする」のが難しくなるレベルとのこと。
「そういうことだよな、なるほど」と思ったのは、自分のチームでなくて「責任者の責任が自分の責任」ってことで、すなわち「管理者にその人自身の責任を持たせる」ことも仕事になってくる〜と。「いい人」でいられなさ、というのが段違いになってくるような気がする。スキップレベルミーティングをテクニックとして紹介されているが、言ってみれば、情報の吸い出し方としてはある種のサンプリングみたいなものかな?って気がした。その目的は、「管理者を導く、支援するために現状を掴むこと」と。
あと”管理者はいわばサブカルチャーを生み出す存在(7.5 べテラン監視者の管理)”っていうのも良い言葉だなー。カルチャー、「内発的に集団のダイナミクスから表出してくるもの」だとは思うものの、マネージャーが何を考えて何を目指しているか?っていう振る舞いを見て部下も動きが(ある程度)統制される・・って考えると、まさに「カルチャー発生装置」って側面はあるよな。

8章 経営幹部

この章は割と読み流し。単なる「読み物」として、って感じが強かったかも。
ここに来るまでは「何を諦めるか・手放すか」みたいなところにバランスをとって説明されていた印象があるけど、経営幹部に置いては「自身の影響力が(自身で考えているよりも)いかに大きいものかをわきまえろ」みたいな。「部下と距離を置くべき」っていうのは、なるほど辛いものがあるなぁ・・・とか感じつつ。
ただ、これより下のレイヤーでも同じことが言えるのではないか?とか使えるんじゃないか?って部分もあって、例えば「部下を悪者にせずに責任をとらせる」とかもそれだな。

9章 文化の構築

「文化とはどういうもので、それがいかに大切か」みたいな話は色々なところで読んだり聞いたりしたけれど、「文化をどう顕在化させ、支援するか」「どう根付かせるか」みたいな話に着目して構築 = (組織の)システムをどうデザインするか?みたいな話で面白かった。
(文化とは〜みたいな話、自分の中での解釈は https://daisuki.nichiyoubi.land/entry/2020/05/30/130403 みたいな感じ)

特に、以前似この本をチラッと読んだ時と今の差分として、仕事でキャリアラダーの策定プロセスに関わる経験をしたので、「9.5 キャリアラダー作成のコツ」は、おぉなるほどそうだよね〜って言いながら読んだ。単なるインセンティブの透明化というものではなく、「どうしたら期待に応えられるか・満たし続けられるか」みたいな、「次の一歩」を考えさせるための地図になるものだよ〜っていう感じだよなぁ。で、これが「実際にチームや組織の状況(ないしあるべき姿)を反映しているものか」っていうのは自問し続けなきゃならんよな。

10章 まとめ

「人の管理がうまくなりたければ、まずは自分自身をコントロールする術を身につけること」「自分が何に反応しているのか、どんなものにインスピレーションを得たり、元気づけられたり怒りを感じたりを知ること」「それによって人的管理の手法も磨かれる」という旨の記述が章の冒頭にあり。このあたり、まさに自分がコーチングや対話手法を学んでみたいな〜と思った動機の1つでもあるので、すごく納得感あるな。

あと、「好奇心」ってキーワード。本書の全体を通じてちらほらと出てきたキーワードであり、この最終章でも出てきた。「未知のことについて心をひらいておく」とか「目の前のことをよく観察し、(主観や先入観でなく)今起きていることや相手そのものについて観察できるようにする」みたいなのが、この「好奇心」のもたらす働きかな?という感想。管理者、冷静で誠実である必要があるんだな〜って思ったので。