この記事は 「ひとりでアジャイルo0h② Advent Calendar 2021」のday-22です。 adventar.org
どんな本
「アジャイルコーチとしてチームに関わる」という題目です。どういう振る舞いを求められるのでしょう?といった話が書かれています。
もちろん役割としてアジャイルコーチを・・というのが、本書の最も合致しそうなシチュエーションだと思いますが、もっと広くの人に役立つ本です。
(アジャイルソフトウェア開発をやり始めた)チームのリーダー、マネージャー、スクラムマスターなど。個人的には役割としての「アジャイルコーチ」という存在を認識していなかった時に、「スクラムマスターのやるべき仕事」を理解したくて手にしました。
そして、実際にスクラムマスターの「コーチとして」「チェンジ・エージェントとして」の能力を開発していこうと考えた時には、手助けになてくれそうな本だなと感じました。
「どういう風に・どういう場面でコーチが求められるか」というのは、ひいては「自己管理型のチームを育むにはどう支援すべきか」という話にも通じます。そういう意味で、コーチやリーダーだけではなくてメンバーと一緒に本書を読んでみるのも、チームのレベルを上げる手助けになる気がします。
日本語版の推薦の言葉から、@kiroharadaさんの言葉を借りれば「コーチに限らず、チームでシステム開発をする難しさを知っている人には、ぜひ手にとって欲しい本」とのことです。
「コーチとは」から始まり、アジャイル開発の難しい局面(プラクティスXXを導入したが上手く行っていない、など)についての観察や介入の仕方、そして(チームだけでなく自身も含めた)持続的な成長をしていくための指南へと続きます。
いわゆるコーチングだけでなく、ファシリテーションやティーチング的な「やるべきこと」についても扱われた本です。
扱う範疇もチーム作り、技術的プラクティス、カイゼンへと渡ります。
ボリュームの割には中身がギュッと詰まった、それでいて「実行に移すにはこれらはあまりにも状況によりすぎる、自己成長と徹底的な観察(と引き出し)が必要そうだ、それに対してこの本は重要な/頻出する問題についてベースとなるようなヒントを与えてくれているな」と感じた本でした。
お気に入りポイントかいつまみ
「直接手を動かさないでチームを支援する」ってどんなイメージ
サーヴァントリーダーシップやコーチなど、「自らがど真ん中に立って課題を解決するわけではない」という立ち回りがあると思います。
実際のところ、それは「出来るはずの人が出来ることをやっていない」というヤキモキした気持ちになったりもすると思うのです。特に、プレーヤーからマネージャーだったりスクラムコーチに転身した場合など。
それに対して、この本には「間接的に助ける」「そっと支援する」といった感じの関わり方を、考え方と具体的な行動指針をあわせて説明しています。
個人的には、第3章にある「質問してはいけない時」、第5章「デイリースタンドアップ」での「自分から先に言わないようにしましょう。」「問題そのものをあげてこないということもあります。コーチとしては、探究心を持ち続けてください。そして、改善の機会がないかと目を光らせてください。」といった箇所など、特に印象に残っています。
チームの成功を一緒に目指す存在ではありつつ、あくまで主役はチームであること、そしてコーチはその支援者である・・・なんて事を感じます。
(忍耐強く付き合っていく、というのがメチャクチャ大変そうではある!)
苦難
チームに対して自ら積極的に関わり影響を与えるのではないにせよ、全くもって放置して消極的・受動的に関われという話ではないはずです。
チームが失敗してしまっては(良い学習にもならない、という意味での失敗)、元も子もありません。
そうすると「チームの停滞」「間違った方向への進行」「自らの”エゴ”を抑え込めるか」などなど、色々な困難が発生します。
本書の多くの章で、「苦難」という節が設けられています。
その名の通り、コーチとしての読者がこれから遭遇するであろう苦難(とその処方箋)を紹介する節です。
こうしたインプットをくれることが、本書の「コーチを目指す人・取り組んでいる人に寄り添った本」としての特徴を際立たせているようにも感じます。
言ってしまえば、コーチに求められる最低限の資質は「自分で考えて最適な選択肢を講じることができる」ことだとも思っています。
なので、必ずしも「マニュアル的に、こうした苦難が現れてくると信じ込む・紹介されている対処を試みる」ことが正解ではないのだと思います。寧ろ、形を変えたり強弱を持って現場に出現してくる事が多いのではないでしょうか。
そういう意味では、別に「正解」や「How to」を与えてくれるものではないはず。
それでも、どうやってチームを観察していくか?どういった部分を(特に)気をつけていれば全体をつかめるか?といったポイントとして非常に有用だと思うのです。
また、「どんな素晴らしい(と自分が思える)ことであっても、人と人がいるところには必ず苦難がつきまとうものだな」とも、改めて感じました。
まとめ
各章・各節をパラパラと捲って見て見るだけでも、思い出しがてら気付かされたり学べることの多い1冊だなと感じます。
時折、手にとってみたいです。
個人的には、より「チェンジ・エージェント」的な側面を強化するのにはFearless Changeと併せて読むことで「踏み出し方」「促し方」「辛抱のやり方」も学ぶと良さそうという気がしました。相性の良い本同士ではないでしょうか。
「チームを育てていきたい」と考えている人には、今の役割や立場に関係なく得るものがある本だと思います