「大規模スクラム Large-Scale Scrum(LeSS) 」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-23です。 adventar.org

day-23は「大規模スクラム Large-Scale Scrum(LeSS) 」です。

どんな本

LeSSわかんねーなぁ〜と思い、ちょっと概要だけでも知りたいなーと思って買った本です。
対象読者としては、「 プロダクト開発に関わる全ての人」で「唯一の前提知識は基本的なスクラムの知識」であるしています。
本書は、役割や計画・イベントについて「1チームスクラム(いわゆるスクラム)」「LeSS(複数チームへの展開)」「LeSS Huge(組織レベルへの展開)」といった段階的な説明を各章にて展開しています。
なので、対象読者のスクラムに関する理解を「基礎知識」と限定しているように、スクラムの復習もしながらLeSSへの展開を説明する〜というような流れになります。

どのようにLeSSを導入するのか、どんな狙いをもって利用するのか、どんなチームを構成すべきか、バックログやスプリントの運用について扱われています。

個人的には、「もう少しLeSSの基礎的な内容・体系を頭に入れてから読んだ方が良かったかも」とも感じました。
例えば、本家サイトの学習リソースや

less.works

@ryuzeeさんの概要スライド slide.meguro.ryuzee.com

などが参照できます。

お気に入りポイントかいつまみ

LeSSの本だけどLeSSを考えていない組織でもヒントになりそう

まず読了後に浮かんだ感想がこれでした。
「そもそも単一チームのスクラムも稼働できてないぞ・・・」という中で「将来的に選択肢に入ってきたら良いな」「ひとまず、知識としては抑えておきたい」と思い、この本を手に取ったのですが。

LeSSをLeSSらしく活用するためには、やはり「しっかりと基本を抑えて実践する、型を活かす」というのが基本になるのだとは思います。
一方で、スクラムが開発と価値へのフォーカスを求めた結果のフレームワークであるように、LeSSも複数チームで単独プロダクトに取り組むためのフレームワークです。
「どうやってその形に至ったのか」という背景や価値を知ることで、「どういう課題を想定して、どういう対処を選択したのか」を感じることが可能になります。

本書は、まず1チームスクラムでの実践についての解説をしながら、簡単に「LeSS ver.」の概要を示し、その上で「何に気をつけるべきか、どう考えるのか」を紹介します。
こうした「難しいところ、うまくいくためのコツ、考え方」を厚めに扱っている点が面白かったです。
「新しいフレームワークではなく(規模を発展させて使う)スクラムなのだ」としているからこそ、(スクラムを履修した人向けに)どう応用するのか?に焦点を当てている、とも言えるのかも知れません。

その結果として、先述の通り、「必ずしもLeSSを採用しなくても、複数チームやいくつかのセクションに分かれた上での意思決定やコミュニケーションをデザインするには?」というヒントにもなり得るものだと感じました。
Y理論的な組織設計、システムシンキングをベースとした意思決定、「プロジェクトやプログラムよりもプロダクト」といったエッセンスは、汎用的な「複数チームで一緒にゴールを目指すには」といった組織設計にも役立つのではないでしょうか。それらをプラクティスに落としたのが「LeSSのルール」だとしたら、正にスクラムやLeSSの採否に関わらず真似できるもの・学ぶべきものが多くあるな、と感じました。

文化と構造

組織(の全体や部分)の動き方について語っている本なので、構造の話は大きなウェイトを占めます。
その一方で、「何を目指すのか」「何を求められるのか」といった文化的な部分が「構造」を作る上での目的であるとも言えるはずです。

本書は、その両者をどちらも重視しながら扱っているような印象があります。構造やチームのデザインをする際にはその「意図」を、意図を説明する際には「中〜大規模で求めるべき意志の浸透やコミュニケーションの在り方」を欠かさず説明してくれています。

まとめ

LeSS面白そうだな、うまく取り入れたらいきいきとしたプロダクト開発ができそうだな〜という魅力を感じました。
実際に体験としてどこかで触れてみたいなぁ。

ただ、個人的には、この本を読んで「よし明日からLeSSやるぞ!!」と言えるまでの解像度を得るところまでは行かなかったかも知れません。。
(もう少し、「自分が近い内にLeSSやっていくぞ〜〜!」という気概を持って読み込んだら全く違う感想になるかも)

それでも、「スクラムについては少しは勉強したんや・・・」って状態から読んで見る分には、とても興味深く面白かったです。
LeSSか否かを問わず、「複数チームで合意をとって一緒にモノを作っていく」という自体は自分にとっても発生しそうな今日です。なので、フレームワーク自体というよりも少しメタな情報を読み取りながらページを捲っていました。
それが、「プロダクト開発の組織設計を考える人にとっては広くヒントになるんじゃないかな」と感じられた一因でもあるかも知れません。し、そういう向き合い方でも得るものが多かった一冊だったなぁ〜という感想に繋がっています。