「スクラム現場ガイド スクラムを始めてみたけどうまくいかない時に読む本」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-18です。 adventar.org

day-18は「スクラム現場ガイド スクラムを始めてみたけどうまくいかない時に読む本」です。

どんな本

「理解は簡単だが実践は困難」と言われるスクラムの、「始めてはみたものの実際にコレどーすんのよ」みたいな話を、よい広さと深さでまとめてくれている素晴らしい1冊・・といった印象です。
序文としてジェフ・サザーランドが寄稿しているなど、その時点で凄い信頼できそうだなーと思います。

あなたが始めたばかりならば、ミッチの本が役に立つだろう。あなたがいま苦労しているところなら、本書はもっと役に立つ。すでに良い結果を出しているなら、ミッチの助けでさらに素晴らしい結果を出せる。改善は決して終わることはなく、ミッチの洞察は真に有用だ。
『序文 P19』

アジャイルとは価値創造と卓越のための終わりなき旅であり、その道を「2,3歩ほど歩みだした」人にとって最も意味を持つ本なのかなと。

まえがきにある「対象読者」によれば

スクラムアジャイルを始めようと思っていたり、まさに始めたところだったり、1年くらいやってきて道に迷ったように感じているなら、本書はあなたのためにある。僕はは公式には、新たにプロジェクトを始めて6ヶ月から18ヶ月の12ヶ月の間にいる企業が対象だとしている。
『まえがき P21』

目次を見ると、スクラムを実際にやっている(やり始めて少し経った)人にとっては「そうそう、まさにそれ!難しかったり上手くチームでやれてないんだ・・・」というツボを刺激してくれそうな感じが伝わるのではないでしょうか。サポートページから確認できます。
ただ、始めようとしている・本当に始めたばかりの段階にある時は、この前に2,3冊くらいはスクラムに関連する書籍を読んだりすると良いのかなーとも。網羅的ではあるものの体系的ではなく、自身の経験と照らし合わせながら読む事で深みが増す本だと思うからです。

お気に入りポイントかいつまみ

実践的であること

タイトルに「現場」とある通り、「こうやって対処すれば良いのだな」というヒントをたくさん得ることが出来ます。
もちろん、スクラムの実践については「理論や背景を理解し、自身のコンテキストに合わせて自分で考える」ことは欠かせませんが。

例えば「PJのはじめに見積もりを出さなければいけない」とか言った時に、ベロシティはどう扱えばいいか?
それに対しては、「過去のデータを使う」「わからないなりに見積もる」「様子を見る」という3つのアイディアを挙げています。
基本的には「様子を見る」を推しつつ、ただし現実には「2〜3スプリントやってみないと全体の規模と消化時期が分からない」とも言えない場面もあるはずです。そうした事情を考慮して、本書では「過去の〜」「わからないなりに〜」という”ありそうな手法”についても、注意点を指摘しながらそれぞれどうやるか?を説明しています。

ベロシティについていえば、「平均を出しつつ、(チーム外の)人には幅を持たせて伝える」といったやり方も、現実的なアドバイスだなぁと感じました。

こうした「理想と現実」をバランス良く扱っているなぁというのが、本書の所々で見受けられました。

プロジェクトの運用中に起こる諸問題

プロジェクトは生き物であるため、素朴に「開発」だけをしている訳にも行かず・・・生産性やチームに難しい影響を与える場面が多々あるかと思います。
スクラム(やアジャイルの「タイムボックス」と「イテレーション」)は、臨機応変さを提供しますが、それは「価値出力への驚異」に対する適応であって「生産性への驚異」には、認めざるを得ないような視点も別の観点もあるわけです。

そうしたトピックも、この「実践的」では取り扱われています。

主観でピックアップして例を上げれば、

  • (コミュニケーションを流暢に行うための)チームのコアタイム
  • 欠陥の扱い方(スプリントへの組み込み方)
  • サステインドエンジニアリング
  • 生産的なデイリースタンドアップのための観点、テクニック
  • 新しいチームメンバー(・・・については、「どういう問題が起こるか」を論じてはいるものの「対処の方法」に関しては軽く触れられる程度ですが)

などなど。
ともすれば、学び始めた人にとっては「え、スクラムってこういう対応方法でも良いのか・・?」とドキドキしてしまうような提案も含まれていますが、逆に言えば「ここまで(純粋な理想から外れても)やって大丈夫なのか」という安心材料になる気もします。

まとめ

チームのコーチとしてのスクラムマスターは、本書の内容を一通り理解しておくことで、観察眼を磨いたり活用可能なワークアラウンドを蓄えることが出来るような気がします。
それと同時に、この本はスクラムマスター以外のチームで読んでみるのもとても面白いだろうな、とも感じます。全員が知っておく価値があるように思うからです。

やはり「やってみると色々と考えたり決めなければいけないことが多い・・・」のが(フレームワークとしての)スクラムかと思うので、こうした「現場のお悩み」に寄り添ってくれる本は、手元に1冊あると嬉しいものです。