この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の7日目です。
昨日はid:o0hさんの投稿でした。便利そうですね。自分も年表的なまとめが欲しかったので、助かります。
今日は、『ワインバーグの文章読本』に想いを馳せながら話をしたいと思います。
ちょうど自分が出入りしているコミュニティでも、いくつかのカンファレンスのCfPがオープンしていまして。 時期的にも丁度よい話題かもな、と思ったのがテーマを選んだきっかけの1つです。
ワインバーグの文章読本
オリジナルのタイトルは "Weinberg on Writing"、邦訳副題は「自然石構築法」です。
そして帯には「あのワインバーグも、作文が赤点だった!」とあります。
・・・あんなに面白おかしく、含蓄のある文章を溢れんばかりに書いている印象がある人が?赤点だった!!?
そんな風に目を引きますよね。
「いつかは、ワインバーグさんみたいな文章を、技術的な文章でもエッセイでも書いてみたいものだ」なんて思っている人も多いはず。私もそう。
なので、そうした点に触れてくれるのであれば、「どれどれ読んでみようかな」なんて思わされる魅力を感じますね。
どんな本で、誰におすすめなの
「作文術」ではあるかも知れないけど「文章術」ではあまりなくて、もっと言うと「文章に限らず、何か面白い(と自分が感じたこと)を表現し発信する」ことを応援する本です。 そのために「どんな風に、そのためのネタを集めるか・組み立てるか」を語る本だなぁという印象です。
なので、「もっと気軽にアウトプットしたいな」とか、「カンファレンスのCfPに応募するプロポーザルを書いてみたい!もっと出したい!!」なんて人に、個人的にはおすすめしたいです。
典型的なのは第1章『文章を書くために大切なこと』に書いてある「作文の教訓その1」で、お気に入りポイントの1つです。
当時は気づかなかったが、ビル・ガフニー先生は文章を書くことについて一番大切なことを教えてくれたのだった。
「興味のないことについて書こうと思うな」
それまでの学校は、違うことを教えようとしていた。
「知っていることについて書きなさい」
これまでの人生の中で何度となくこのルールを破ってきた。それどころか、たいてい文章を書こうと思うのは、自分の知らない何かがあるからだ。わたしにとって、ある題材について書くことは、それについて知る最良の手段である。第一興味がなければ、知りたいと思うはずもない。
(P5)
なにか「アウトプット」と言った時に、特にそれを人に見せようとか人から見える所に残そうと行った時には、「正しく。一定のレベルで完成(もしくはゴール)したものにしなければならない」というプレッシャーを感じがちです。
それは、ハードルを上げるし筆を持とうとする手を重くするものでしょう。
「そうではないのかもな」とハッとさせられます。
「発展途上である」「自分自身が、探求の途上である」からこそ、記録を残す。文章などアウトプットとしての形式にする。それによって、自分自身がそのテーマに更に深く対峙する・・・
そんな関係だからこそ、「誰かのために」以上に「自分が求めているから」アウトプットをできるようになるのかも知れない!!
なんて、個人的には思ったのです。
(たまたまだけど、最近聴いたトキトケトークでダウ90000蓮見さんが言ってた「脚本を書くってなってからインプットはしなくて、旅行とかで得たインプットで、”これ書けるな”ってなったものを脚本を書く時に使うって話との似てるなーって気がする)
自然石構築法
自然石で壁を作ろうと思っていて近所に意思屋がない場合、一度にひとつか二つずつ、大量の石を集めてこなくてはならない。集めているあいだ、いつかどこかで何かの壁になりそうな石はないかと目を光らせながら人生の荒野を歩き回ることになる。
わたしのいようにいくつかのプロジェクトを並行していれば、石を見つけとき、「よし、これはAの壁にちょうどよさそうだ」と考えたりする。もちろん、その石はAの山に積む。しかし、単にその石が気に入ったから拾ってきたという場合もある。そのときは特にどの壁用と決まっていないXの山に積む。ここの石は気に入ったものばかりなので、何か壁にはめ込むのにちょうどいいおもしろいものや興味をひくものを探して行き詰まったときは、この山を覗いてみる
(P18)
何か「これに沿ったものを書こう(書きなさい)!」となってから、例えば何かのテキストやインタビュー記事を持ち出して、そうやって調達した素材で1つの文章を仕上げる。これは確かに枠にははめ込めるのかも知れませんが、どうにも「作業」っぽい時間が長そうだな・・・なんて想像が付きやすいですよね。
一方で、この「自然石」による構築、もともとストックしてあった「自然の力で磨かれ削られた、いきいきとした魅力を持った素材」を取り出してきて組み立てるような行為でしょうか。
これによって、「書く・作る」といった行為そのものにも、そこからできあがったものについても、(ややもすれば不揃いではあるかも知れなくても)不自然な窮屈さが薄れて「美しさ」が宿るものになるはずです。
なるほど、確かに「興味のないことについて書かない」に通じそうです。
すると大事なのは、「AやB・・・の箱を持ち、蓋を開けておく」。すなわち、漠然としてでも「自分はこういうことに興味がありそうだ」と、少し大きなテーマをいくつか自分の中に持っておくこと。
そこに、「関連がありそうだな」とビビッときた石(つまりアイディアや、情報)を放り込んでいくこと。おもしろいものといつ出会うか?は分からないので、生活の中でアンテナを張っておく必要がありそうですね。
そして、「Xの箱も蓋を開けて置いておくこと」。これも、かなり大事なことだな〜なんて個人的には思いました!まだ名前のない「興味の箱」、すなわち今の自分にとっては未知の可能性がそこにはあって、そこに何かを積み込んでいくのは「なんとなくいいな」に対する感度を高める事につながりそうです。
こういった態度から、なるほどワインバーグの含蓄に富んだユーモア溢れる文章が生み出されてくるのか・・・と関心してしまいます。
まとめ
ここまでが第2章、この次に第3章『スランプをなくす』があった後、本書の多くは「いかに自然石を集めたり、整理整頓したり、そして構築して整えるか」という話が続きます。
例えば『安全に石を盗む』『記憶から自然石を集める』『捨てる石の選び方』『石を並べ始める』なんて章題が並んでいます。
自然石構築法なるキーワードをここで知って、「興味のない事に書くのをやめて、かつもっと色々とアウトプットを作っていきたいな!」なんて思った人には、ぜひ手に取ってもらいたい1冊です。
ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025 - Adventar、day8となる明日は「問題、価値、価値判断エンジン」です!
