「UltimateAgileStories 10th Anniversary」

この記事は 「ひとりでアジャイルo0h① Advent Calendar 2021」のday-21です。 adventar.org

day-21は「UltimateAgileStories 10th Anniversary」です。

booth.pm

どんな本

国内のアジャイル系のコミュニティの人達による、同人誌です。
内容はさまざま!!目次を眺めていると、Scrum Festみたいなイベントのタイムテーブルを見ているような感覚になりました。楽しいですね。

見方を変えると、「当たり前なこと」が書いていなくて「好きな人が好き勝手書いている」という感じでもあるので、オタク感というか同人誌っぽさがあり素敵でした!

お気に入りポイントかいつまみ

全体的にどういう話か、というのをまとめるのが難しいので、(今の気分で)好きだった話をいくつか。

アジャイル放談

最初の記事。
アジャイル、XPにせよ何にせよ基本的には『物理的に空間を共有し、近い距離で働くこと』を強く推奨しているものが多いと思います。
そんな中で、2020年に出された本誌では「リモートワークどうよ?」といった話を。座談会の書き起こしです。

色々な所に話が飛び火しながら、後半以降の「アジャイルとは何だったのか」「スクラムは、XPは、」なトピックが出てくるとギアが1つ上る感じが。
アジャイルコーチやスクラムマスターたちの「実際にやってみて何が起きたか、どうなったか」という話には、なるほどなぁと感じる部分が多くあります。
(あと単純に皆さんの知識の深さや話題の広さがすげぇ・・)

その中でも、「いきいきとした開発(とアジャイル)」という話があったり、「スクラムほどXPが(「マーケティング」的に)成功しなかったのは。何が違ったのか」とか「でも、ワクワクするのはどっちだ・・・」とか、めちゃくちゃ面白いなーと思いました。

そして角谷さんの↓の講演が見たくなる・・・アーカイブとかあるのだろうか

speakerdeck.com

Fearless Change でやってみる現場改善

Fearless Changeかなり好きな本なのですけど、それを「使う」事に目を向けた話です。
もともとがパターンランゲージの本として書かれているので、個別の「パターン」を取り入れていくだけでなく「組み合わせることで全体を作り上げる」というための機能もしっかり備えているのです。
流れ、組み立て、そうした後に得られるアウトカムを・・・というのは、「うんうん、そうだよねやっぱりそれをやりたいんだもんな」と思いながら読みました。

新任のスクラムマスターが観察すべき5つのこと

私のCSM研修の際のトレーナーであるharadakiroさんの章。
とてもコンパクトなのですが、力強さを感じました。

自分自身として、今は(スクラムチームでもないのだけど)プロジェクトを直接指揮するよりもプロジェクトリーダーの壁打ち*1役のような関わり方が多いです。
で、プロジェクトって生き物だよな〜と思っているので、「まぁ元気そうならどうにかなるんじゃない」という感覚もあり。勝手に立ち上がれる、自分で進める、適度に進んで行ければゴールには着くでしょう!と。 逆に「まだ元気が足りねぇな」ってなると、必死でテコ使ってぐいぐい押したりするわけです。

この章で言っていること、すなわち「観察すべきこと」は全て「○○は元気か」「○○に活気はあるか」で纏められています。
元気があれば何でも出来る。あ、これで冒頭の話・・「そもそも、開発っていきいきとやりたかったはずだよね」的なものにも繋がっていくんですかね。

中動態と感覚統合とアジャイル

書いてある内容が難しい・・・という感じはしつつ、これは深く頷きながら読みつつ「はぁ〜ん」と嘆息しながら読みました。

そこでアジャイルを中動的に捉えることを推奨したいです。自分ごとと して内なる主語としてその過程の中にいる立場で地に足をつけ、成長し ていく姿勢です。そこには「〜する」も「〜される」もありません。そ の状態になるためには自己を見つめ、自由と強制のどちらでもない立ち 位置に「いる」ことが大切になるはずです。プラクティスの実践や学び に高揚することは大事なことですが、今自分たちはどのような過程に「い る」のかに着目することで情熱と冷静の間に身を置くことができるので はないでしょうか。複数の人たちが集まり協働するチームだからこそこ の姿勢が大切だと実感しています。 『UltimateAgileStories 10th Anniversary P111』

「する」でも「される」でもなく、「ある」とでも言うような。 強い意志を持って(ぐいっと自他を押すように)動くでもなく、誰かに命令されてやるでもなく、自然と「次の行動が湧く」という感じなのかな?と捉えています。
で、これってOODA LOOPでいうところの「皮膚感覚」だな、と。

私は、数年前より感覚統合とアジャイルチームをテーマにして講演やデ ィスカッションを重ねてきました。そこで大切なことは、アジャイルや チームでの活動においては、如何にチームとして感覚統合できるかがプ ロダクトとチームの成長に関係しているのではないかということです。 (中略)
チームの感覚統合とは、「今の状況がわかっている」(固有受容覚)と 「バランスが取れている」(前庭覚)であり、これを土台として姿勢・ 言葉・感情 → 学習・対話・実践へと繋がっていきます。土台がないと 学習・対話・実践したことが定着せず、能動態と受動態の対立構造に陥 ってしまい、本質的な取り組みに注力できなくなるという構図です。 『UltimateAgileStories 10th Anniversary P112』

ミッション(プロダクトビジョン、ワーキングアグリーメント等のValue)による方向付けと、「見えるか」による現状理解の解像度を揃える&十分に情報を流通させ続けることによって、自然と「これが今やるべきことだな」といったタスク感覚が自然と(内発と外発の中間、もしくは融合地点から)湧いてきて、それに違和感もなく動く。気付いたら勝手に体が動いているような、そんなチームはとても強いよなぁと思います。

まとめ

この記事を書くために、改めて目次を読み返していると「あれもこれも面白そうなものがたくさんあるよな〜」と再実感しました。
気が向いた時にパラパラとめくって読みたい本だな、と思います。
あと同シリーズの過去の版も興味あるかもな、読んでみたいな〜

*1:というよりは積極的にティーチング〜コンサルティング寄りのコミュニケーションが多いですが