この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の13日目です。
昨日はid:o0hさんの投稿だったことでしょう。
今日もまた、以前に読んだ本をパラパラとめくりながらハッとしたフレーズについて紹介していきます。
お相手は『コンサルタントの道具箱』になります。
原題は 『More Secrets of Consulting』で、"more"とある通り、『The Secrets of Consulting(コンサルタントの秘密)』の続編となります。
色々な道具たち
『コンサルタントの道具箱』は、問題解決者が頭の中に入れておくと役に立つ「道具」を紹介する本です。1章ごとに1つの道具が出てきます。
そうした道具を使うことで、問題を解く、より正しいニュアンスを加えて言うなら、問題を正しく視るのを助けてくれるはずです。
「そうだ、こんな時は”願いの杖”を使ってみよう」「"探偵帽と虫めがね"が必要だな」なんて風に、(比喩的な)名前がついた道具を「取り出す」ことで事態を展開させていくのです。
魚眼レンズ
第11章は『魚眼レンズ』でした。
魚眼レンズは、状況判断能力、自分や協力者との関係に周囲から影響を与える要素を見る能力を表す。これは第三の「見る」道具である。鏡は自分を見る道具、望遠鏡は相手の視点を理解する道具、魚眼レンズは周囲のすべての人の総合的な視点を示す道具である。
(P155)
「自分」ではなく、「相手」だけでもなく、その間にある関係性や「お互いに何に巻き込まれているんだろう?」を点検するための道具になるのですね。
魚にはいつも水が見えない。
章の中にはいくつものエピソードや教訓、そして「法則」があります(ワインバーグ節が絶好調な本です!)。
タイトルにした「魚にはいつも水が見えない。」「魚はいつもまっさきに空気に気づく。」が、個人的にお気に入りの、そして今回取り上げたいフレーズです。
身の回りの事象をパターン化して、「いつも通り」もしくは「違和感」を見つけるのは、認知能力の素晴らしい機能の1つです。それによって、集中力の緩急を効率的に制御し、必要なところでストレスを上手く利用します。
つまり、「慣れ」が認知を歪めているのです。
ワインバーグはその点についての注意を促します。それが、「水の中で暮らしている魚にとって、いつも水なんて見えていない」という結果。
見るべき対象として、水がそこにあるべき時にも、「いつもの」で見えていないとしたら、それは「問題」になります。
それに続いて、今度は「魚はいつもまっさきに空気に気づく。」というフレーズが取り上げられています。
「空気のような存在」とは、人間や地上生物にとっては正に「普段から当たり前に自分の周囲を取り囲んでおり、意識するに足らない存在」を指しますが、水の中で暮らしている生物にとっては事情が違います。
いつもと違う出来事は、コンサルタントに助けを求めるきっかけになることが多い。
(中略)
さいわい、社外コンサルタントとして呼ばれるときには、私自身がいつもの水から出た魚である。魚眼レンズは、背景と前景を客観的に捉えるのに最適の道具である。客観的な視点があれば、興奮した人たちを落ち着かせ、慣れきった人たちを目覚めさせることができる(P167)
日常的には「慣れ」に上手く付き合うことが重要ですが、問題が発生している状況、もしくは「顕在化していない問題に気づく」ために、「慣れ」を敢えてリセットするタイミングが必要なのでしょう。
サティアの三つの普遍的な質問
そうした、罠とも言える「慣れ」の引力に如何にして抵抗するか?という話も、いくつか紹介されています。
その中でも個人的に印象に残っているのは「サティアの三つの普遍的な質問」です。これについては、この章に限らずチラホラと言及があり、正に「普遍的」といえる問題解決(もしくは発見、定義)のためのヒントになるものと言えるでしょう。
- 彼らはどうしてここに来たのだろう?(過去)
- 彼らはここにいることをどう思っているのだろう(現在)
- 彼らは何を実現したいのだろう(未来)
(P169)
過去、現在、未来について目を向けさせるのが基本ということですね。
その目的は、インセプションデッキの強力な質問の一部とも共有されている感じがします。
「過去」については、ボールディングの逆行原理についても言及されています。これは、day2・genneiさんの記事でも紹介されていました。私も好きな法則((原理だけど)です。
これによって得られるものは、「彼らにとって、いま何が水なのだろうか?」のヒントでしょう。
「現在」、これは3つの中で最も独特な言い回しなのではないでしょうか。
「ここで何をしているのか」ではないのですね。「いることを、どう思っているのか」です。つまり、客観的な事実・”コト"を観察視するよりも、「何が、コトの観察を歪めているのか。どんな認知が働いているのか」に意識を向けるものなのだ、と私は理解しました。
自信を持って過ごせているか、自分なりの目的があり強い内発的動機が働いているか、周りの人が好きで気持ちよく呼吸が出来ているか、それとも感情を殺して作業として割り切って過ごしているか・・・
それぞれの人から描写される「いま起きていること」は、当然のように異なってくるでしょう。
状況をリフレーミングするために「観察者」の内心を観察する、それを自身が行う観察へと反映させる、それによって鋭い問題解決に繋げていく流れにつなげる。
強力な道具になりそうですよね。
「未来」もまた、同様に「頭と心」、そして「心が頭に影響すること」を踏まえた分離的な視点だな、と考えています。
いくつか質問例が載っているのですが、その中でも「彼ら(クライアント)が、なぜ・どのくらい私(コンサルタント)を必要しているのか」を掘り下げるような内容が含まれています。これには、特にハッとさせられました。
対話を行って共同で問題解決に取り組む上で、相手の「本気度」やニーズ、それに「助けを求める役割を、私に重ねているのか」は重要ですよね。コミットメントがないところで、支援は難しいです。
なるほど、そういうところでも「何ができるか」は様変わりしてくる・・・特に、外部からの協力者としてコンサルティングをするのは「水ではなくて空気」的な存在になる訳ですから。良い刺激を流し込んで、それが良い形で受容されるか?そうでないとしたら、どういう風にやり方を変えるか?すなわち、自分自身が、そして相手を巻き込みながら、取り上げる問題が変わってくるに等しいです。問題定義を誤れば、真の解決は永遠に手に入らないですからね
まとめ: コンサルタントの道具箱は良いぞ
『コンサルタントの秘密』と併せて読みたいですね。あちらの方が、もうすこし具体的・実践的な話が多かったような気もします。
対してこちらは、もう少し抽象度が高く問いかけてくるような感じがありますね。そういう意味でも、ウォーミングアップ的に、『秘密』でこの世界観に入門しておくのが良さそうかなと思います。
まぁ、あまり気にしすぎずに、どちらからでも読めると思いますが!
ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025 - Adventar、day15となる明日は、何かの記事です。
