然るべきをエンパワメントする

「せっかく優秀な人がいても、プロダクトコードや運用は必ずしもそのような姿にならない」ていうのありがちだよな〜って思っている面があり。
あの人がいながら、なんでこんなプルリクがはびこっているんだ!!みたいな。
「どうして突出した個人の力と組織の力は大きく乖離するのかい?」みたいなのは、自分の中で「現実」として受け入れられるようになりつつも、ガッカリ感とかモヤモヤ感があった。
逆に言えば、「自分が何かやれるなら、その沼のような谷のようなのを飛び越えられるような力学を手に入れたい!」というのに関心がある。・・・憧れ、といった方が正しいかも。

んで「ユニコーン企業のひみつ」を読んだのだが、(前提としてハイパワー人材を取り揃えてるよねってのはありつつ)そこに描かれているのは非常にイキイキとした組織像だった。
何度も強調されているのは「必要なのは、チーム(=現場、みたいなものだと思う)に権限と信頼を与える」というもの。

権限ってなんだろうね〜〜?
「会議に出ている」とか、「これからは◎◎をします!という宣言を出し、従わせることができる」とか?形あるものとしての権限ってなんだろうか。

例えば「草の根活動として自発的に勉強会をやる」場合、参加者の募集や日程の調整などの巻き込みは要るが、別に「組織や上長の承認を得て、下達な指示を出す」ことによって成立させるものではない気がする。
なので「権限がなくとも影響力を持つ」ことはできる、という気がする。

そうなると「公式なリソースに対して、動かす・変更するなどの影響を及ぼす」みたいなものが権限になるのかな?
「公式なリソース」と「非公式なリソース」というものがありそう。
草の根活動では「非公式な範囲で動かす」で通る。

「上長承認」を伴って行動を行う場合、それは「権限の代行・委譲」を受けて実行している、みたいなことか。authorityによるauthorize。
なので、その人自身の属性としての権限を与えなくても、行為への許可として一時的・局所的な権限を「お墨付き」によって分け与えているような形かも。

権限とは影響力の行使もしくは獲得なのだとすれば、「君が言うならやってみなよ」と上司に言わしめたり「あなたが言うなら乗ってみたいです」というような「信頼」の蓄積が大事な気がする。
「目に見える影響力」としての権限、「目に見えない影響力」としての信頼かな?
もちろん、両者が一致しているのが望ましいし、信頼ができてかつ影響力を発揮しようという人を上に引き上げるのが組織デザインだと思う。

と考えると、「信頼して権限を与える」というのは、本来であれば信頼や説得を担保に行われるはずの「上から下への権限の貸し出し」について、先に投資を行うようなものではある。でも、「形式と実態ないしポテンシャル」を非常に自然でシームレスにつなげるようなやり方だな〜と思った。

形式としての実態と、ポテンシャルとしての実態は一致しているのが良い。
これは、冒頭の「優秀な人がいるけどプロダクトコードが稚拙」問題と良く似た構造かも?

なるほど、「なんで突出した個人の力と組織の力は大きく乖離するのかい?」に対して「然るべきをエンパワメントする」のが有効なアプローチなのかな。

「誰をエンパワメントするか」「どこを引き伸ばすか」というのは、組織の意思決定なので、要するにビジョンに従って行われるものになる。
周りからの信頼(これがシーズとなり)、全体からの要望(これがニーズとなり)に応じて「見えない影響力」を発揮させ、さぁいよいよ発現させるぞ!!というのには、どうしても時間がかかる。彼本人の啓蒙によってビジョンを押し動かしていく必要がある。
その点、「行動を指し示す」のに際して「上の人」が合理的な影響力を利用するのはシンプルで、わかりやすく早い。

トップダウンな「お墨付き」でボトムアップなポテンシャルを「引き出す」というところで、良い方向へと進むように背中を押すことが出来るのかも。 君なら必ずみんなを良い方向に導いてくれるよねという信頼に基づき、もしくは「我々としては良い方向はアッチだと思っているのだけど、君なら良く理解して共感してくれるはずだよね」という信頼でも可能だけど、それをもって「あの人は凄いよ」という非合理的な影響力のある所に権限を与え、合理的な影響力へとアップキャストする。

どうしたら組織が動き始めるか。然るべきをエンパワメントする。
そうやって「あるべき姿」「そこに向かうための推進力」「現実」の三者が徐々に一致していき、イキイキとした組織が育まれる・・・ような気がする。
(もちろん、リーダーはビジョンやミッションを語り続けることは大前提として必要)