魚にはいつも水が見えない。/魚はいつもまっさきに空気に気づく。; コンサルタントの道具箱から

この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の13日目です。
昨日はid:o0hさんの投稿だったことでしょう。

adventar.org

今日もまた、以前に読んだ本をパラパラとめくりながらハッとしたフレーズについて紹介していきます。
お相手は『コンサルタントの道具箱』になります。

原題は 『More Secrets of Consulting』で、"more"とある通り、『The Secrets of Consulting(コンサルタントの秘密)』の続編となります。

色々な道具たち

コンサルタントの道具箱』は、問題解決者が頭の中に入れておくと役に立つ「道具」を紹介する本です。1章ごとに1つの道具が出てきます。
そうした道具を使うことで、問題を解く、より正しいニュアンスを加えて言うなら、問題を正しく視るのを助けてくれるはずです。

「そうだ、こんな時は”願いの杖”を使ってみよう」「"探偵帽と虫めがね"が必要だな」なんて風に、(比喩的な)名前がついた道具を「取り出す」ことで事態を展開させていくのです。

魚眼レンズ

第11章は『魚眼レンズ』でした。

魚眼レンズは、状況判断能力、自分や協力者との関係に周囲から影響を与える要素を見る能力を表す。これは第三の「見る」道具である。鏡は自分を見る道具、望遠鏡は相手の視点を理解する道具、魚眼レンズは周囲のすべての人の総合的な視点を示す道具である。
(P155)

「自分」ではなく、「相手」だけでもなく、その間にある関係性や「お互いに何に巻き込まれているんだろう?」を点検するための道具になるのですね。

魚にはいつも水が見えない。

章の中にはいくつものエピソードや教訓、そして「法則」があります(ワインバーグ節が絶好調な本です!)。

タイトルにした「魚にはいつも水が見えない。」「魚はいつもまっさきに空気に気づく。」が、個人的にお気に入りの、そして今回取り上げたいフレーズです。

身の回りの事象をパターン化して、「いつも通り」もしくは「違和感」を見つけるのは、認知能力の素晴らしい機能の1つです。それによって、集中力の緩急を効率的に制御し、必要なところでストレスを上手く利用します。

つまり、「慣れ」が認知を歪めているのです。
ワインバーグはその点についての注意を促します。それが、「水の中で暮らしている魚にとって、いつも水なんて見えていない」という結果。
見るべき対象として、水がそこにあるべき時にも、「いつもの」で見えていないとしたら、それは「問題」になります。

それに続いて、今度は「魚はいつもまっさきに空気に気づく。」というフレーズが取り上げられています。
「空気のような存在」とは、人間や地上生物にとっては正に「普段から当たり前に自分の周囲を取り囲んでおり、意識するに足らない存在」を指しますが、水の中で暮らしている生物にとっては事情が違います。

いつもと違う出来事は、コンサルタントに助けを求めるきっかけになることが多い。
(中略)
さいわい、社外コンサルタントとして呼ばれるときには、私自身がいつもの水から出た魚である。魚眼レンズは、背景と前景を客観的に捉えるのに最適の道具である。客観的な視点があれば、興奮した人たちを落ち着かせ、慣れきった人たちを目覚めさせることができる

(P167)

日常的には「慣れ」に上手く付き合うことが重要ですが、問題が発生している状況、もしくは「顕在化していない問題に気づく」ために、「慣れ」を敢えてリセットするタイミングが必要なのでしょう。

サティアの三つの普遍的な質問

そうした、罠とも言える「慣れ」の引力に如何にして抵抗するか?という話も、いくつか紹介されています。
その中でも個人的に印象に残っているのは「サティアの三つの普遍的な質問」です。これについては、この章に限らずチラホラと言及があり、正に「普遍的」といえる問題解決(もしくは発見、定義)のためのヒントになるものと言えるでしょう。

  • 彼らはどうしてここに来たのだろう?(過去)
  • 彼らはここにいることをどう思っているのだろう(現在)
  • 彼らは何を実現したいのだろう(未来)

(P169)

過去、現在、未来について目を向けさせるのが基本ということですね。
その目的は、インセプションデッキの強力な質問の一部とも共有されている感じがします。

「過去」については、ボールディングの逆行原理についても言及されています。これは、day2・genneiさんの記事でも紹介されていました。私も好きな法則((原理だけど)です。

これによって得られるものは、「彼らにとって、いま何が水なのだろうか?」のヒントでしょう。

「現在」、これは3つの中で最も独特な言い回しなのではないでしょうか。
「ここで何をしているのか」ではないのですね。「いることを、どう思っているのか」です。つまり、客観的な事実・”コト"を観察視するよりも、「何が、コトの観察を歪めているのか。どんな認知が働いているのか」に意識を向けるものなのだ、と私は理解しました。

自信を持って過ごせているか、自分なりの目的があり強い内発的動機が働いているか、周りの人が好きで気持ちよく呼吸が出来ているか、それとも感情を殺して作業として割り切って過ごしているか・・・
それぞれの人から描写される「いま起きていること」は、当然のように異なってくるでしょう。
状況をリフレーミングするために「観察者」の内心を観察する、それを自身が行う観察へと反映させる、それによって鋭い問題解決に繋げていく流れにつなげる。
強力な道具になりそうですよね。

「未来」もまた、同様に「頭と心」、そして「心が頭に影響すること」を踏まえた分離的な視点だな、と考えています。
いくつか質問例が載っているのですが、その中でも「彼ら(クライアント)が、なぜ・どのくらい私(コンサルタント)を必要しているのか」を掘り下げるような内容が含まれています。これには、特にハッとさせられました。
対話を行って共同で問題解決に取り組む上で、相手の「本気度」やニーズ、それに「助けを求める役割を、私に重ねているのか」は重要ですよね。コミットメントがないところで、支援は難しいです。
なるほど、そういうところでも「何ができるか」は様変わりしてくる・・・特に、外部からの協力者としてコンサルティングをするのは「水ではなくて空気」的な存在になる訳ですから。良い刺激を流し込んで、それが良い形で受容されるか?そうでないとしたら、どういう風にやり方を変えるか?すなわち、自分自身が、そして相手を巻き込みながら、取り上げる問題が変わってくるに等しいです。問題定義を誤れば、真の解決は永遠に手に入らないですからね

まとめ: コンサルタントの道具箱は良いぞ

コンサルタントの秘密』と併せて読みたいですね。あちらの方が、もうすこし具体的・実践的な話が多かったような気もします。
対してこちらは、もう少し抽象度が高く問いかけてくるような感じがありますね。そういう意味でも、ウォーミングアップ的に、『秘密』でこの世界観に入門しておくのが良さそうかなと思います。
まぁ、あまり気にしすぎずに、どちらからでも読めると思いますが!

ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025 - Adventar、day15となる明日は、何かの記事です。

制約と選好を区別する; 要求仕様の探検学から

この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の13日目です。
昨日はid:o0hさんの投稿だったことでしょう。

adventar.org

今日は、以前に読んだ『要求仕様の探検学』をパラパラとめくりながら、心に残った話を1つ書いてみます。

ワインバーグといえば「本当の◯◯」

一般システム思考入門も「観察すること」の重要性を厚めに説いていましたが、結局のところ「真に客観的なものはなく、この世で生きている限りは相対的な思考と付き合っていくことになる」と理解することになります。
すなわち、他者間で「なにをみて、どう受け取り、どう判断し評価するか」が100%純粋に伝わるなんて不可能だぜ!と。

だからこそ、ライト、ついてますか 問題発見の人間学であったように「誰の問題なのか?」が重要になってくるし、また他の著作でも幾度となく繰り返されたように「同じ文章でも、"Mary Had a Little Lamb"のどの単語を強調して読むかによって、意味するところが変わる」ことになる訳です。

そんな風に、色々な場面で「本当の問題」「本当の要求」「本当の意図」と徹底的に向き合う、もしくは「どこまで言っても”本当の”ことなんて現れない、それを理解してどこまで今の思い込みを疑う」ように積極的に促している人物だな、と自分は思う訳です。

選好

『要求仕様の探検学』の17章には『選好』という章があります。

選好とは属性についての, 望ましいが, 選択可能(オプショナル)な条件である。あらゆる制約を満たす最終的な設計解はどれも許容可能な解だ。しかし, ある解は他の解よりも好ましいということがある。選好によって, 設計者は, 選択可能な解を比較し, よりよいほうを選択することができる。
(P207)

すなわち、要求の中にあって「どのように、どの程度、それを実現すべきか」の調整ができるものである、とでも言えるでしょうか。

例えばモバイルアプリを作っていて、「オープニング画面で目玉のキャラクターがアプリ上で表示可能であること」はもはや選択の余地のないもの、つまり「制約」になってきます。
一方で、「オープニング画面においてアニメーションが複数パターンあること」は、「何パターンあって、それぞれどのくらいの長さとなるか」と可変要件なのかも知れません。その場合、これは「選好」の域になります。

制約と選好を区別する

17章の3節は、『制約と選好を区別する』という見出しがついています。
これが、非常に大事だし油断すると溺れてしまうよな〜〜〜〜!!ってな気持ちになりました。

「額面通りに受け取る」と、往々にして、最初の時点で要求に含まれる大凡の要素は「制約」に見えてきがちです。要求とは本質的にそういうものでしょう。「こうあってほしい」を言語化したものになるのですから。
しかし、その文書に含まれる1つ1つを点検していった際には、「どれもが同じ熱量でそこに並んでいるわけでもない」と気づきます。

可能性の拡大は、曖昧さを運び込み、ソフトウェア設計を複雑なものにしますが、選択肢の柔軟さは設計者を手助けします。たどるべき「筋」が明確であれば、守るべきライン・捨てて良いものを組み立てやすくなりますが、その際に切れるカードの多さは「何をどこまでいじっていいか」次第になるのです。

なので、要求を受け取った際に、「なにが制約で、何が選好か」に注意するだけでも、ソフトウェアエンジニアとして効果的な働き方ができるようになるのではないか?なんて思いました。

要素を分解する、情報を重み付けする、それを通じて会話相手とのブレを減らす。
こうした取り組みが、必要なはずです。

もしくは、「選好」とは「まだ制約にまで昇華されきっていない、曖昧さを残した部分」とも捉えられるかも知れません。

選好に気づかせる

もう1点、この章で好きなのが次の一文。

選好はクライアントからくる, 設計者からではない。

これは忘れやすい。その理由は, 特に, 設計者がオプションを提示しない限り, クライアントは自分の選好に気づかないからだ。
(P209)

単純に言うと「つまり、こういうことですか?」とか「こういう感じにできればOKですかね?」と聞き返すことで、何が大事で何を満たしたいかの解像度を上げるような取り組みなのだと思います。
これを省こうとすれば、要求主の「想像しきれておらず、まだ暗黙裡に補完していたもの・思い込んでいたもの」が、そのまま残り続けることになります。よって、要求文書にとって最も忌避すべき「曖昧さ」が紛れ込んだまま!と。

とはいえ、「これは制約ですか?要求ですか?」と突き返しても、本当に良い対話や意思決定が生まれにくそうです。なので、「オプションを提示」してあげることで、実は隠れていた「本質的に必要なもの」の輪郭をくっきりさせること。
これは、テストの三角測量にも似たものかな〜とも個人的には思いました。「どこにありますか?」ではなく「AとBという2つの地点仮決めしてみましょう、この中間で、どっち側にどのくらい近いですか?」と聞いたら、本当の座標に近づける!みたいなイメージ。

まとめ: 要求仕様の探検学は良いぞ

例によって、この本も咀嚼しながら読んでいくと大変おもしろい1冊です。

ぜひ、色々な人に「スーパーチョークとは何だったのか」、その驚愕の結末に感激してほしいものですね!

ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025 - Adventar、day14となる明日は、何かの記事です。

PHPカンファレンス福岡について語っ記

PHPカンファレンス福岡について語ってほしい! Advent Calendar 2025のday12の枠をいただいたので、記事を書きます。 adventar.org

自分が好きなイベントについて色々な人が語っているのを眺めるの楽しいなぁ

私と#phpconfuk

今では気軽にPHP系コミュニティのイベントに参加させてもらうようになりましたが、いわゆる「カンファレンス」と呼ばれるものに初めて参加したのが #phpconfuk.2017 。

自分の中では、「PHPカンファレンス福岡が生みの親、PHPerKaigiが育ての親」みたいな感じがあります。

初参加したphpconfuk、初めて外部で登壇した*1pheprkaigi、「地方のカンファレンスに行って旅行みたいな気持ちも味わえるの楽しいな」を初めて味わったphpconfuk,「コミュニティって素晴らしいな楽しいな」を初めて味わったphperkaigi・・・と、色々あります。

(時系列関係なく列挙)

「なんか仕事ばっかしていてムシャクシャして」参加した2017

それまで参加したコミュニティイベント、初めてはPHP Matsuri、その後にCakePHP クリスマス勉強会、そこから何年か空いて(転職もして)、CakePHP MeetUpだったと思うんだけどなぁ(参加時のログが見つからなかった*2 )

それで、いわゆる「ボッチ参加」したのが#phpconfuk.2017で。
マジで誰とも喋ってない気がするし、懇親会も「それは一体・・・何ですか、そういうのもあるんですか??」くらいの感じだから、多分参加してない気がします。
当時は「登壇する」なんて発想もないし、CfPとかプロポーザルなんて単語も知らなかったんじゃないかな〜。なので、もちろん一般参加で。

そうだよなぁ、その当時は多分このブログも開設してないんだな。nichiyoubi.landドメインも、持ってたっけ?くらい。いやそれはあったかもな。。どうなんでしょうね。*3

いずれにせよ、「だいぶ前だな」と感じるわけです。

福岡入りして、朝食は当時にわかに話題になっていた松屋の「ごろごろ煮込みチキンカレー」でした。誰かと飯を食うでもなく、「福岡らしいもの」をカンファレンス前に食すでもなく。

ほとんど唯一くらいの可能性で「知り合い居そうだ!」って思ってたCakePHP MeetUPで見知った人がいたのが、当日の登壇予定を「変更されました」というアナウンスされているのを見て、しょんぼりしたり。

当時、「PHP7に移行しました」とか「Hackもやっぱり結構良いぜ」みたいな時代で、そういう登壇が多かったような印象が残っています。

あと、この記事を書くに当たって「そういえば、瞬間的に大量のアクセスが来る系のサービスでいかにリクエストを捌くか〜・・・みたいな話あったなぁ、印象に残っているぞ。記憶違いではないよな??」なんて思って裏取ってみたら、めちゃくちゃ長谷川さんじゃんか。
えぇ、そうか言われてみたらそんな気もしてきたぞ、と目ん玉を見開いて驚嘆しながら書いています。マジか。
楽しそうに話すのと「頭が痛い問題だ!」って感じと技術的な面白さが相まって、すごい聴いていて楽しかったな〜カンファレンスってやつに来て得したな〜って思ったんだよな。

あと、「エラーと例外の話もあったなぁ」「俺はそこで”ポケモンキャッチ”って言葉を知ったんだぜ」とか。・・・これも、思い出したらhirakuさんだったのか〜!

他にも、タイムテーブルを見るとyakitoriさんの発表もあったり。いや〜、「ランサーズのPHP7/CakePHP3以降シリーズ」、当時から始まっていたんだなぁ。
その後、CakeFest Tokyoだったり2社合同勉強会だったりで交流したり、#phpcondo.2024で久々の再会もしたり(めちゃ嬉しかったなー!)、思い出深い(?)人の1人で。

あとは、以前の記事でも触れたけど、1番印象に残っているのはPHPerに覚えて欲しい日本語の重要性
コードとか実装的な意味での?技術っちい話ではなくて、「なるほどこういう事も大事にしないとだよなぁ。。」って刺激をもらった気がします。
とりわけ、それ以前の1社目ではWebバックエンド〜フロントエンドをほぼ単体で書いてた+サポート対応も途中から巻き取ってやっていたので、「わかりやすさ」とか「困らなさ」って結構な関心事だったんですよね。ヘルプシステムのCMS構築とか、Wiki的な「キーワード自動リンクシステム」とかを勝手にやる程度には、「ユーザー自身が自力で解決できる世界って良いよな」って頑張っていたりもしたし。
逆に、プログラマー目線で言うと「一生懸命書いたコード」が「誰も助けられていない」ってなると物凄く口惜しいし、そういう意味で「日本語の重要さ」って絶対にそうじゃん、大事じゃん・・・って思いながら聴いていた思い出です。

あと!
もう1つ外せないのが、ytakeさんのADRの話ですね!!
ほほぉ〜〜〜〜ってなりすぎて、その後に社内で作った凄く小さなシステムを1個、ADR仕立てにした思い出があります。
「いわゆるMVCみたいなやつ」と比べて「レスポンスのステータスとかも、クライアントに創出するメッセージだって考える方が自然じゃね??」って感覚とか、ぶっ刺さったなぁ

それに、これまた長谷川さんになるけど(ダブルヘッダーあるんだw)、カンファレンスのあちら側とこちら側って発表この時なの・・・?
前職時代、「カンファレンスってどういうものなの」を人に説明したり、あるいは「プロポーザルを出してみたい」という人の背中を押す際に、めちゃくちゃ引用していた発表資料です。
10回以上、誰かに紹介している気がする。

そんな感じで、「当時の刺激的だった話」も「今ふりかえってみて、現在に繋がりまくってるなって感じ」も、両方盛りだくさんに思います。

というか、タイムテーブルを改めて眺めてみて、物凄く「今や知っている人」の名前がとても多い。
これも一重に、cakephperさん・アカセさんを初めとして「積み上げてくれた主催、運営スタッフ、地元コミュニティ」の方々がいて、そこに集ったり集い続けたりした人が居て、そういう連綿と継がれてきた太い流れの存在を語っているように感じて、ただただ尊い・・・って気持ちになります。
ソフトウェアも勿論そうですけど、こういう「育んできた先人たちの貢献」で自分たちもこんなに楽しい思いが出来ている、本当に頭が上がらないです。

再・私とphpconfuk

そして、2019年からPHPerKaigi/PHP Conferenceに参加するようになり、「いよいよ遠征もしてみるか!!」となったタイミングの2020。
・・・それどころでは無かったですね。

大復活の2023,始まる前からものすごい熱気で、自分もアレヨアレヨとプロポーザルを20個出したり、わくわくしてました。
この時の発表、自分でも結構好きなんだよなぁ

speakerdeck.com

そんな #phpconfuk.2023、自分にとって「非常に印象深い」と思える要素、もっというと「初めて味わえたこと」が2つあり。少なくとも2つ。数えりゃ無限。とりあえず2つだけ・・

福岡での「初めて」その1

1つは、「自分が登壇する枠」を初めて意識したこと。

この時に登壇した会場が「Fusicホール」だったんですよね。
個人的には、「タイムテーブルのどこを任されたか」「どこのトラックで登壇することになったか」っていうのは、基本的に喋る側が気にするようなことか〜??って気持ちでおりまして。
何にせよ登壇して喋る人って、相応にコストかけて準備もするし、前日や当日はゴリゴリにMP削られるし、何だったら登壇終わっても暫くは足が震えたり心拍数が上がったりするじゃないですか。

だから、「1番左側のトラックだった」とか「裏にすごい人が予定組まれている」とか、「最初だ」「最後だ」とか、そういうの着目してもなーって思っちゃうんですよね。
まして、技術的な話、「聴きたそうな人が多そうだ」って見立てと「マジで面白い超ニッチ話」のどちらもTrueたりえるので、あくまで「自分が話したいことをプロポーザルとしてしたためて、仮に採択してもらったら存分に喋るだけ」って気がしています*4

・・ただ、福岡ファッションビルの「あのでっかいホールで!?」って、なるほど自分がそんな空間で喋ってるの想像付かんな???ってなり。
前回が「初めまして、カンファレンス」で知り合いもいないし緊張してすごしていたせいで、すごいデカい所だったよな〜って印象が本当に強くて。
ちょっとだけ、「覚悟」が求められた回になりましたw

いやー震えたなー。

福岡での「初めて」その2

もう1つの「初めて」が、市川さん - #あすみかんの上にあすみかん に当事者自身が書いてるのですが、「(うがった見方をしまくると)自分が巻き込んでしまった人が、自らの意思でコミュニティを楽しめるようになっているのを見届けられた」というのがあり、これがとても印象深いです。
・・・というか、「楽しめるようになったんだな、良かったな〜」とか思っている暇もなく「なんか自分より遥かに馴染んでね??」と思わされるような、そんな勢いがありましたがw

まぁその辺りの努力にせよ幸運にせよ本人の資質でしかないので、他人がとやかくいうのもおこがましいのですが、とはいえ「一緒に参加してくれるようになった新参者」が「120%楽しんでくれてる!!」って姿を目にするの、めちゃくちゃ良いものです。

個人的に、初参加の2017について、「良い話をたくさん聞けた!こんなに技術どっぷり、めちゃ楽しい〜〜〜!」はありつつ、どうしても「人混みだし緊張したなぁ!」も大きかったので。
そういうラインを突破しているのを見られると、ホッとするんですよね。少し肩の荷が降りた。

あまり体験できることでもないなって思うと、非常に貴重な経験をさせてもらったなと。

#phpconfuk2回目、3回目

自分の参加回数で数えた時に2回目・3回目となる2024&2025も、お気に入りな話をしているな〜。
(福岡に限らず、まぁ公募で発表しているものは大体お気に入りって話はあるんですが・・・)

「あの俺が!?データ構造とか口にしてるの!?!?」って話題騒然の2024、そして直近なため「個人的にもまだまだ深堀りたいな」って温度感ではあるものの本当に多くの人に直接/ブログ等で接反響をいただいた2025

2024ではAsk The Speakerでshin1x1さん(同じ時間帯だった)と話せてホクホクでしたし、2025は「よくみたらphpconfuk最後のレギュラーセッション枠でホールなのか」ってプレッシャー・・を味わう余裕もないくらい「ちょっとでも良い話を持ち帰ってもらいたいな〜〜!」で必死でしたが、本当に「機会をもらえて、喋れたて、良かったすぎる!!!」な30分+後日だったので。

毎回、「前回の最高点を更新してくる!」っていうより「新しいところで最高の思い出を作ってくれる!!」っていうのが、自分にとってのPHPカンファレンス福岡なのかもなぁ、と思います。

10年間お疲れ様でした!!

色々な地方/東京でのカンファレンスが勃興している中で、#phpconfukは「得も言えぬ良さ」っていう表現が自分的には1番しっくりきます。

令和に3回しか参加していない自分が何かを申せるわけではないですが、語弊を恐れずに言えば、何か「スペシャルなゲストが来る」とか「創意工夫の煮凝りみたいな特殊なコンテンツがある」とかっていう魅力の出し方よりは、「ごくごく真っ当に、集まれる場所・刺激的な話が聞ける場所」を築いているような印象でした。

では何故に、あれほどに”良い”のか・・?っていうのが、ちょっと個人的には長らく謎ですらあったのですが、このAdvent Calendarを始め色々な参加者ブログなどを見ていて、最終的には「中の人の人柄が良くて、それがイベントににじみ出ている」って事だなーー!って気持ちです。

実際、「#phpconfukがあったから」で産み落とされていったカンファレンスも多くあるわけですからね。カンファレンス自体、そしてそこに参加する人、参加したあとに人生が変わる人・・と、この一言がその後に日本経済にもたらした経済効果凄そうじゃないですか????って気すらしてきました。
「私も、あなたの数多くの作品の一つです」と感じる人も少なからず居るはずです。

PHPカンファレンス福岡歴はまだまだビギナー寄りな自分ですが、大好きなカンファレンスです。この記事を書いている内に、単純に博多また行きたくなったーーーーー

素敵な思い出と出会いをありがとうございました!!
またCfPが動き出す時期があったら言ってください、今度はプロポーザル制限無しでやりましょう!


PHPカンファレンス福岡について語ってほしい! Advent Calendar 2025、明日はDay13でニシ サダオミさんの登場です!

*1:所属企業が共済した公開イベントで話したことは1回あった

*2:当時、もしや活動場所がFacebookグループではないですか!?懐かしい

*3:初投稿が2017年初だったので、ブログ自体は全然あった。ただ、6月前後は全く更新してない

*4:実際、同じ時間帯でおぎさんが話していたやつもめっちゃ魅力的だしなー https://speakerdeck.com/togishima/monlognoshi-zhuang-nixue-buinterfacenotukaidokoro

自然石構築法: 「興味のないことについて書こうと思うな」で作文に取り組む

この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の7日目です。
昨日はid:o0hさんの投稿でした。便利そうですね。自分も年表的なまとめが欲しかったので、助かります。

adventar.org

今日は、『ワインバーグ文章読本』に想いを馳せながら話をしたいと思います。

ちょうど自分が出入りしているコミュニティでも、いくつかのカンファレンスのCfPがオープンしていまして。 時期的にも丁度よい話題かもな、と思ったのがテーマを選んだきっかけの1つです。

ワインバーグ文章読本

オリジナルのタイトルは "Weinberg on Writing"、邦訳副題は「自然石構築法」です。
そして帯には「あのワインバーグも、作文が赤点だった!」とあります。
・・・あんなに面白おかしく、含蓄のある文章を溢れんばかりに書いている印象がある人が?赤点だった!!?
そんな風に目を引きますよね。

「いつかは、ワインバーグさんみたいな文章を、技術的な文章でもエッセイでも書いてみたいものだ」なんて思っている人も多いはず。私もそう。
なので、そうした点に触れてくれるのであれば、「どれどれ読んでみようかな」なんて思わされる魅力を感じますね。

どんな本で、誰におすすめなの

「作文術」ではあるかも知れないけど「文章術」ではあまりなくて、もっと言うと「文章に限らず、何か面白い(と自分が感じたこと)を表現し発信する」ことを応援する本です。 そのために「どんな風に、そのためのネタを集めるか・組み立てるか」を語る本だなぁという印象です。

なので、「もっと気軽にアウトプットしたいな」とか、「カンファレンスのCfPに応募するプロポーザルを書いてみたい!もっと出したい!!」なんて人に、個人的にはおすすめしたいです。

典型的なのは第1章『文章を書くために大切なこと』に書いてある「作文の教訓その1」で、お気に入りポイントの1つです。

当時は気づかなかったが、ビル・ガフニー先生は文章を書くことについて一番大切なことを教えてくれたのだった。

「興味のないことについて書こうと思うな」

それまでの学校は、違うことを教えようとしていた。

「知っていることについて書きなさい」

これまでの人生の中で何度となくこのルールを破ってきた。それどころか、たいてい文章を書こうと思うのは、自分の知らない何かがあるからだ。わたしにとって、ある題材について書くことは、それについて知る最良の手段である。第一興味がなければ、知りたいと思うはずもない。

(P5)

なにか「アウトプット」と言った時に、特にそれを人に見せようとか人から見える所に残そうと行った時には、「正しく。一定のレベルで完成(もしくはゴール)したものにしなければならない」というプレッシャーを感じがちです。
それは、ハードルを上げるし筆を持とうとする手を重くするものでしょう。

「そうではないのかもな」とハッとさせられます。

「発展途上である」「自分自身が、探求の途上である」からこそ、記録を残す。文章などアウトプットとしての形式にする。それによって、自分自身がそのテーマに更に深く対峙する・・・
そんな関係だからこそ、「誰かのために」以上に「自分が求めているから」アウトプットをできるようになるのかも知れない!!
なんて、個人的には思ったのです。

(たまたまだけど、最近聴いたトキトケトークでダウ90000蓮見さんが言ってた「脚本を書くってなってからインプットはしなくて、旅行とかで得たインプットで、”これ書けるな”ってなったものを脚本を書く時に使うって話との似てるなーって気がする)

自然石構築法

自然石で壁を作ろうと思っていて近所に意思屋がない場合、一度にひとつか二つずつ、大量の石を集めてこなくてはならない。集めているあいだ、いつかどこかで何かの壁になりそうな石はないかと目を光らせながら人生の荒野を歩き回ることになる。
わたしのいようにいくつかのプロジェクトを並行していれば、石を見つけとき、「よし、これはAの壁にちょうどよさそうだ」と考えたりする。もちろん、その石はAの山に積む。しかし、単にその石が気に入ったから拾ってきたという場合もある。そのときは特にどの壁用と決まっていないXの山に積む。ここの石は気に入ったものばかりなので、何か壁にはめ込むのにちょうどいいおもしろいものや興味をひくものを探して行き詰まったときは、この山を覗いてみる
(P18)

何か「これに沿ったものを書こう(書きなさい)!」となってから、例えば何かのテキストやインタビュー記事を持ち出して、そうやって調達した素材で1つの文章を仕上げる。これは確かに枠にははめ込めるのかも知れませんが、どうにも「作業」っぽい時間が長そうだな・・・なんて想像が付きやすいですよね。

一方で、この「自然石」による構築、もともとストックしてあった「自然の力で磨かれ削られた、いきいきとした魅力を持った素材」を取り出してきて組み立てるような行為でしょうか。
これによって、「書く・作る」といった行為そのものにも、そこからできあがったものについても、(ややもすれば不揃いではあるかも知れなくても)不自然な窮屈さが薄れて「美しさ」が宿るものになるはずです。

なるほど、確かに「興味のないことについて書かない」に通じそうです。

すると大事なのは、「AやB・・・の箱を持ち、蓋を開けておく」。すなわち、漠然としてでも「自分はこういうことに興味がありそうだ」と、少し大きなテーマをいくつか自分の中に持っておくこと。
そこに、「関連がありそうだな」とビビッときた石(つまりアイディアや、情報)を放り込んでいくこと。おもしろいものといつ出会うか?は分からないので、生活の中でアンテナを張っておく必要がありそうですね。
そして、「Xの箱も蓋を開けて置いておくこと」。これも、かなり大事なことだな〜なんて個人的には思いました!まだ名前のない「興味の箱」、すなわち今の自分にとっては未知の可能性がそこにはあって、そこに何かを積み込んでいくのは「なんとなくいいな」に対する感度を高める事につながりそうです。

こういった態度から、なるほどワインバーグの含蓄に富んだユーモア溢れる文章が生み出されてくるのか・・・と関心してしまいます。

まとめ

ここまでが第2章、この次に第3章『スランプをなくす』があった後、本書の多くは「いかに自然石を集めたり、整理整頓したり、そして構築して整えるか」という話が続きます。
例えば『安全に石を盗む』『記憶から自然石を集める』『捨てる石の選び方』『石を並べ始める』なんて章題が並んでいます。

自然石構築法なるキーワードをここで知って、「興味のない事に書くのをやめて、かつもっと色々とアウトプットを作っていきたいな!」なんて思った人には、ぜひ手に取ってもらいたい1冊です。


ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025 - Adventar、day8となる明日は「問題、価値、価値判断エンジン」です!

GMワインバーグさんの日本語書籍まとめを作った

この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の6日目です。
昨日はやまずんさんの投稿でした。パーフェクトソフトウェアは良いぞ!!

adventar.org

まとめページつくった

記事タイトルのとおりです。
完全にagentic codingです、オレジャナイウチノクロウドコードガヤッタ

o0h.github.io

元々、gist上に書籍リストは作っていたんですよね。

ワインバーグの本JP · GitHub

何故そんなものを?と言うと、Podcastで喋っていて、「執筆や出版の時期いつだろう、順番で言うと何の前あたり?」なんて話題がしばしば(というか毎回かもな・・・)お互いの口から発せられていたので。
手元にまとめておこーぜ、という機運があったんです。

それで、「日本語訳された本なら1番信頼できそうなのは国会図書館??」と思って、蔵書リサーチを使ってデータを纏めたのが先のgistです。
ワインバーグ」とか「Weinberg」とかで引っ掛けて、あとはコンサルタントプログラマを対象としていそうなやつをチェックして・・・って感じでまとめました。

アナログ作業onデジタルツール

で、これはまぁ便利だったんですけど、「翻訳が出版された時期しかわからん、書いたのいつよ」って話題がやっぱりありまして。
あと、「オリジナルのタイトルがわからない」とか、「そもそも日本語/英語ともググらビリティが低い名前ありがち・・・」とか感じていたんですよね。

「ココまでまとめてあれば、全然パワーでごりごりやっても調べられる量だな???」となりまして、よ〜しまとめちゃうぞ〜〜!と。
思いついたのがAdvent Calendarの季節だったので、「じゃあそれでネタにしよ」→今に至る!です。

ありがとーえーあい

今回はマークアップスクリプトも1バイトも自分で書いておらず、agentic codingでフフフフフ〜〜って進めました。
作業をしながら「原著の情報と紐づけるのも、やってくれんじゃね???」って思って試してみたら、かなり精度出て大勝利です。
文章読本は"Weinberg on writing"って言うらしいよ」とか「元のリストに要求仕様の探検学がないや、足しておいて」とか、書籍に関する情報を補足したのはそのくらい?

ぶわ〜〜っとスペック駆動で進めて、気になった箇所について単発の指示を積み重ねて、できあがり〜〜って流れです。

ファーストコミットの requirements.mdが17:02:46、公開前の最後のコミットが17:57:56なので、1時間くらいしか掛かっていないんだな。とても気楽。

まとめてみて

まだ抜けている本がある。少なくとも自分で把握できているのは

とか。

・・そんなんありつつですけど、並べてみるとやっぱり面白いなぁと感じます。
「20世紀最後に書いていたのがソフトウェア文化を創るシリーズなのか」とか。
「プログラミングの心理学が1冊目ってことはなさそう、↑の3冊なんかはその時期かな〜」とか。
「ソフトウェア技術レビューハンドブックって未読だけど、前後に出版された本を見ると、ちょっと意味合いが変わってくるかも?(タイトル的に、初期に書かれた本なのか中盤以降の本なのかでトーンが変わりそう的な・・w)」とかとか。

こういうまとめが、他の人についても色々欲しいぜ。デマルコとか。


ということで、GitHubで管理しているので、お気づきのことがあったらIssueやPRお待ちしております!🤝

ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025 - Adventar、day7は id:o0hさんの「ワインバーグ文章読本を題材に何か」です!楽しみですね。私も楽しみです。

今年もPHPカンファレンス香川に参加してめっちゃ楽しかった〜〜記 #phpconkagawa

11月23日(前夜祭), 24日(本編)に行われた、PHPカンファレンス香川2025に参加してきました!!

phpcon.kagawa.jp

前回に引き続き、良い意味での緩さと熱気が感じられる、とても素敵な時間となりました。

改めて、実行委員長の@chatiiさんを始め、スタッフの皆さん・関係者の皆さん・一緒に話したり盛り上がったりしてくれた参加者の皆様、ありがとうございました🙌

これが俺達のカンファレンス会場だ!!

この記事は、うどんを食べながら書いています。
だって香川で釜玉うどん専用だし醤油を買っちゃったからね・・・

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ワインバーグの一般システム思考入門を読もう読もう

この記事は、ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025の1日目です。

adventar.org

さて、『一般システム思考入門』という本があります。
日本語訳は、紀伊國屋書店から1979年に出版されています*1

calil.jp

今回は、この本について少しだけ紹介させてください。

イントロ

いま、「システム思考」と聞くとどんな事を思い浮かべますか?
多くの人は、ドネル・メドウズの名前や、あるいは『学習する組織』なんかの書籍名が挙がるかも知れませんね。

私もそうです。

最初に興味を持ったのは『システムづくりの人間学』を読んでいた時で*2、第2部にド直球で「一般システム思考」という部があるのですが・・・読んでみると、殆ど何を言っているかが分からないぞ、ピンと来ないぞ!!となりまして。
それで、「もうちょっと、ちゃんと話してもらわないといけない」と思ったのが、最初にこの本を手に取ったきっかけです。

一般システム思考 ≠ 「システム思考」

ワインバーグは、『一般システム思考入門』の中で、あるいは『システムづくりの人間学』の中で、 世の中にあるシステムなるものを、どう捉えていくか について語っています。

メドウズやセンゲの紹介する、例の「因果ループ図、氷山モデル、レバレッジポイント・・等と絡んでくるよな問題解決のツール的なシステム思考」とは、かなり重心が違う話であると心得ておくことは重要なのではないでしょうか*3

前者が「世界を、システムとして、どう理解していくか」なのに対して、後者が「どう問題を解決していくか」というニュアンスが強いものと、個人的には感じています。
もちろん、両者は不可分ですし、「なぜ理解したいのか?といえば、問題(課題)を定義するため」「解決のためには理解が必要」というモチベーションがある事は確かです。
また、「一般システム理論」「サイバネティクス」といった歴史的な発見にルーツを持っているであろうことは、どちらにも共通しています。

いずれにせよ、こうした「違い」について勘違いしていると、この『一般システム思考入門』という本はどうにも読みにくくなると感じます。
例えば、索引を覗いてみても「フィードバック(ループ)」という単語も出てこないですからね。
実のところ、私も「あのフィードバックループの図はいつになったら出てくるんだろう?そこからが、きっと本番だよな」と思いながら読み進めていたら、おかしなことに随分とページが減っていき・・・中盤に差し掛かって、「もしかしたら別物か?」と気付いた次第です!

一般システム思考とはどんなものなのか

いくつかのキーポイントがあると思いますが、まずはシンプルで直感的(かつ「システム思考」と感覚を共有されている、と言える)なところから挙げていきましょう。

その1つで合成の法則, これは少なくともアリストテレスにまで遡ることができる.

全体は部分の単なる寄せ集め以上のものである.

これに対する 分解の法則 は次のようになる.

部分は全体の単なる断片以上のものである.

(P60)

その次に強調しているのは、「観察」でしょうか。

システムとは物の見方である

(pp. 70-71)

これは、どういう事か?といえば、「システム(もしくは問題)が、客観的・絶対に的に存在するのではない。それを観察した人が、何を見出して、どう”境界線”を引くかによって、その形が変わる」という話になります。
非常にワインバーグらしいな、と個人的には感じます。「品質とは 誰かにとっての 価値である」とか、「それは 誰にとって 問題なのか?」とか、常に相手(ないし自分)ありきで事象を捉えるスタンスを貫いているイメージがあるのです。

このあたりは、『システムづくりの人間学』の第2部にある章『システムの数え方』でも強調されていましたね。
そこで紹介されていたのは、「羊を数えるためには、羊とそれ以外(山羊や狼)を見分けられないといけない」という喩え話でした。

こうした観点を頭に叩き込んでいると、 完璧なシステムの記述(分解だったり、モデリングと読み替えても)など存在し得ない 事に、自然と納得できそうです。
システム思考とは、「おおよその事に役に立つ」が「完全な回答には成り得ない」といった感覚にも繋がります。
そして、「観測者自体もシステムの一部」となります。観測者が変われば「システムがかくあるか」も変わるわけですからね。

「一般」とは

この『一般システム思考入門』は、ベルタランフィの「一般システム理論」を念頭に書かれたものです*4。本文の記述を引用すると、こんな感じに。

この本は, 元来, 普通の人たちに役立てるという目的で生じてきた一般システムを, 再度, 普通の人間の手に取りもどそうとして書かれたものであり, そしてその絶望的な意思表現なのである.
(P65)

「專門」の反対が「一般」です。
特定の領域(たとえば学問領域)においての思考や物の見方を超えて、学際的に「一般化されて適用できる観点」が、一般システム思考です。
物事の、すなわち「システム」について、どう読み解くか?また、観察者として何に注意を払うべきか?の手解きをしているのが、この『一般システム思考入門』だと感じました。

まとめ・どんな本でどういうモチベで読めば良いのか

この本はコンピュータ・プログラムを教えはしないが, コンピュータ・プログラマーが, なすべき思考法を教えるものである.

(P5)

「科学的な見方」として「帰納的・分解的な解釈」を指しながら、そういった「”絶対的” ”客観的”なものなど、ありえない」としたら、いったい目の前にあるものを、どう捉えて記述していけばいいのだろうか?を語っているのだ、というのが個人的な理解です。
・・・もう少しじっくり読み込んでみたら、また違って見えるかも知れませんが。

「そんなものがない」のだとしたら「どうしたら、そういう罠(思い込み)にハマりやすいだろうか」「どう気をつけていけば良いのか」というヒントを与えてくれる本です。

本書の表現を借りれば、

  1. 思考過程の改善──"思考を方向づけ, 鋭い質問を提起する"
  2. 特定のシステムの研究──"実際の必要あるいは目的"
  3. 新しい法則の創造と古い法則の整備──”創り適用を試みて回る"

(P61)

これらが、一般システムのモデルを手に入れることで役立てる働きだ、と言えます。
この1冊を読んだある日、突然そんな能力に目覚める・・とまでの確信は、今のところ自分としては持てていませんが、ただし「一般」的な見方を手に入れること・「システムとは物の見方」の観点に立つこと、これらが非常に重要な価値を持っているような予感はするのです。

んー、改めてじっくり読みたいなと思っています。
とても1回では咀嚼しきれなかった!
ただ、その一方で、いつもながらの「ワインバーグっぽい、ユーモアと親切心が大いに盛り込まれた本だった」とも感じています。小難しく抽象的ではありつつ、それでも所々で肩の力を抜けて読めたのは、こうした側面があるからでしょう。


ワインバーグさんにまつわるAdvent Advent Calendar 2025、2日目となる明日は@genneiさんです!👏

*1:オリジナルは75年出版

*2:ただ、購入自体は2021年8月6日だった!と記録が残っている

*3:ついでにいえば、ワインバーグのシステム思考法とも、関連がない印象です。名前かなり似ているのに。あちらでは「サイバネティクス」とかって単語は出てくるものの、あくまで「制御モデル」の話としてであり、「一般システム思考」の話はなかった、はず。とはいえ、「複雑なもの」を「どう見立てるか」という話ではある

*4:ベルタランフィの本を読んだことがないので、読んでみたい・・本人の著作でなくても良いけれど。前に探した時に結構なお値段だったので、躊躇っているところ